温泉ソムリエでライターの小林真理さんは足湯を推す。
「夏バテで体が疲れているところに、湯疲れが加わってしまうと逆効果。足湯ならそういうことはありません。のんびりと額に汗がじんわりにじむぐらい、入りましょう。血行がよくなり、疲労物質とされる乳酸の排出もうながされます」
暑さで食欲がない場合、二酸化炭素泉の飲泉もいい。
「飲むと炭酸の刺激で胃の蠕動(ぜんどう)運動が活発になり、食欲が出てきます。胃の粘膜も刺激されて血管が広がるので、水分の吸収がよくなります。飲む量の目安は1日にコップ1杯、100~150ccです」(前田さん)
<冷え症>
血液循環や体温調節をつかさどる自律神経に不調が起こり、手足や腰が冷たく感じる冷え症。現代では冷房などの影響で、むしろ夏のほうが冷えを訴える人が多いという。そんな夏の冷えには「保温系=塩類泉」と「血管拡張系=二酸化炭素系」の泉質がいいと前田さん。
「塩類泉に見立てた食塩水では水道水より体温が1.5倍ぐらい速く高くなります。また、塩類泉に入ると塩が皮膚の表面に残って、放熱をブロックしてくれる。とくに肌荒れをしやすい方でなければ、湯は洗い流さないほうがいいでしょう」
本格的に冷え症を改善したいなら、5~7日間温泉地に滞在して、1日1回湯につかるといいそうだ。
血管拡張系はどうか。
「二酸化炭素は人間の老廃物を処理したときに出る物質の一つ。皮膚が温泉の二酸化炭素を吸収すると、体は老廃物を処理したと誤って認識し、栄養と酸素を補給しようと血管が開き、血流がよくなるのです」(同)
保温系なら貝掛温泉、高峰温泉、血管拡張系なら五味温泉、有馬温泉(銀泉)、船小屋温泉などがある。入り方にもコツがある。
「38~40度の少しぬるめの湯に、胸下までつかる半身浴を。5分入って3分休憩、8分入って3分休憩という入り方が理想。きっちり時間を計らなくても、温まったら湯から出て、冷えてきたら入ってというのを、3回ほど繰り返してもいいでしょう」(小林さん)
※週刊朝日 2015年8月21日号より抜粋