「筆談ノートは何冊か残ってますが、私が書いてるのが95%で、本人は『特に変わりはない』とかそんな感じの言葉でした」(三男)
食生活では「マグロやサーモンの刺し身、煮魚などが好きでよく食べてました。97、98歳までは駅の階段を上り下りするなど、毎日体を動かしていた」(同)
免疫学の第一人者で、順天堂大学の奥村康名誉教授はこう言う。
「百井さんが食べていたという魚の脂は体にいい。特に青魚はいいですね。たばこを吸っても吸わなくても、寿命には関係がない。ニコチンは脳細胞のネットワークを刺激し、ぼけ防止になったり、軽いうつが治ったりすることもある。肺がんの発がん物質としてはたばこより車の排ガスのほうがよっぽど害があります」
書を好み、「春風をもって人に接し、秋霜をもって自らをつつしむ」(春風のように人にやさしく、秋の霜のように自分に厳しく)という佐藤一斎の言葉を好んでいたという。そんな百井さんにも最期の時が訪れた。
「6月21日の父の日に一緒にご飯を食べたころまでは元気でした。その夕方くらいから少し熱が出て、だんだん意識が遠のいていき、苦しまずに亡くなりました」(三男)
告別式は9日、近親者が20人ほど集まって営まれた。自然体で天寿を全うした大往生だった。
(本誌・牧野めぐみ、一原知之、上田耕司、小泉耕平、長倉克枝/今西憲之)
※週刊朝日 2015年7月24日号