司馬遼太郎さんの知の源泉のひとつは膨大な蔵書にある。自宅の廊下や書斎にいまも並ぶ本棚をちょっと拝見した。
約6万点とされる蔵書に誰もが圧倒される。とにかく家じゅうが本棚だらけなのである。
1979(昭和54)年7月、東大阪市下小阪の新居に入る際、司馬さんは注文をつけた。
「壁面をすべて本棚で埋めてください」
その後も本はどんどん増え続け、こうして玄関、応接間、廊下、書斎、壁という壁に、あらゆるジャンルの本が並ぶことになった。書名を読むだけで作品名が浮かんでくる。資料を読み込みながら、司馬さんは竜馬や歳三、嘉兵衛や秋山兄弟と、夜更けに話し込んだのだろう。
※週刊朝日 2015年5月22日号