Cool BluesJimmy Smith
Cool Blues
Jimmy Smith

 前回に続いてBNLT999シリーズの未発表隠れ名盤をご紹介しよう。オルガンジャズの王者ジミー・スミスのライヴ盤だが、1958年のクラブ「スモールズ」における実況ということは、もし正規盤として発売されていたら、ギリギリ、あの栄光のブルーノート1500番台にその名を残していた可能性も無くは無いわけだ。

 そして仮にそうなっていたとしても、ちっともおかしく無いだけの内容、風格を備えた名演である。このあたり、かなり出来の良い演奏も、平気でお蔵入りさせてしまう、まさにブルーノートの贅沢さを思い知らされる1枚と言えよう。

 聴き所はなんと言っても低音の迫力ブリブリ、フットペダルの凄みを利かせたジミー・スミスのソロの迫力である。ジミー・スミスというと60年代に一世を風靡した『ザ・キャット』(Verve)あたりのポップな人気を思い浮かべる方もおいでかもしれない。もちろんあれもなかなか楽しいアルバムだが、若干取り上げた曲目の知名度、アレンジの豪華さに頼った面もなくはない。

 しかし、前述のブルーノート1500番台に残されたジミー・スミスの演奏は、たとえば『クラブ・ベビー・グランドのジミー・スミスVol.1,2』(Blue Note)など、アドリブ一発で勝負のゴリゴリ正統路線の名演だ。要するに、アルフレッド・ライオンが売り出した50年代ジミー・スミスは、まさしく玄人好みのオルガニストだったと言える。

 そして今回ご紹介の『クール・ブルース』(Blue Note)はまさに王道路線ど真ん中、ご存知《チュニジアの夜》など、ドス黒くグルーヴしつつ弾きまくるジミー・スミスの実力を見せ付けた掛け値なしの名演である。

 そして、このアルバムのもうひとつの聴き所がサイドマンの組み合わせ。だいたいが出番の少ないマニア好みのテナー奏者、ティナ・ブルックスが入っているのだ。そして、どちらかと言うと音色もフレーズも黄昏気味のティナの相方が、軽快かつ底抜けに明るいルー・ドナルドソンというところが面白い。

 一見水と油のようでいてこれがジャスト・フィット。テーマをそのまま吹くだけの《ダーク・アイズ》も、音色の組み合わせの妙か、不思議な味がある。

【収録曲一覧】
1. Dark Eyes
2. Groovin' At Smalls
3. Talk
4. A Night In Tunisia
5. Cool Blues
6. What's New
7. Small's Minor
8. Once In A While

Jimmy Smith(org)
Lou Donaldson(as)
Tina Brooks(ts)
Eddie McFadden(g)
Donald Bailey(5-8), Art Blakey(1, 2 & 4)(d)

Recorded at Small's Paradise in New York City 1958/4/7