著書『終活なんておやめなさい』が話題になっている宗教評論家のひろさちやさん。ひろさんは終活だけでなく、戒名や墓石も必要ないという。作家の林真理子さんがその真意に迫る。
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林:本のなかで「戒名もいらない」と書かれてますね。
ひろ:何のために必要かなんですよ。江戸幕府がキリシタンを弾圧して「全員仏教徒になれ」と言って檀家制度を作ったんですが、そのときお坊さんに、「葬式をやれ」と命じたんです。それまで葬式は家長の仕事で、お坊さんはお坊さんの葬式しかやったことがないから困ってしまった。それで在家の人間を出家させて、お坊さんと同じような葬式をすることにして戒名が必要になったんです。見え見えの付け焼き刃なんですよ。
林:いまは自分で戒名をつけちゃおうという動きもありますね。
ひろ 俗名のままでいいんですよ。死んでから誰も知らない名前で呼ばれる必要ないでしょう。
林:でも、うちの母は「うちの一族はみんな十一文字だったから、私も十一文字にしてほしい」と言ってるんです。もう100歳近いんですけど。年寄りの見えなんでしょうか。
ひろ:そうなんでしょうね。坊主の金儲けのためにみんな犠牲になってるんですよ。
林:「お墓もお墓参りもいらない」ともありますが。
ひろ:墓石って、埋めたら二度と出てこないように重い石を置いたのが起源なんです。立派な墓石にするのは、「おまえ、絶対に出てくるなよ」と言ってるのと同じなんですね。そもそも、お墓の下に故人がいるわけありませんから。「私のお墓の前で泣かないでください そこに私はいません」という歌(「千の風になって」)がありましたが、そのとおりですよ。私自身は、死んだ瞬間にお浄土に行くと信じてますから。
林:どうして信じられるんですか?
ひろ:仏教の勉強をしてるうちに、自然と信じられるようになったんです。
林:信じて疑わないわけですね。
ひろ:そう考えたほうが楽ですからね。本当はお釈迦様は「死んだあとどうなるか、考えるな」と教えられたんです。でも、つい考えちゃいますよね。だから終活をやっちゃうんです。でもお浄土に行くと信じれば、終活なんて考えないですむんですよ。
林:どうしたら信じられるんですか。
ひろ:たとえば就職活動で入社試験を受けたら、合格するかどうかビクビクしますよね。でも、もしその会社の社長の息子だったら? 親父が入れてくれると信じてるから、なんの心配もいらない。それと同じなんです。自分は仏様の子供なんだから、きっと仏様はちゃんとしてくださる。だから楽なんです。
※週刊朝日 2015年2月6日号より抜粋