球団からドラフト指名の挨拶をされた選手たちが抱負を語る……そんな報道が目に付く時期だが、「守備範囲の広さと粘り強さを見てほしい」と語っていたのは巨人から育成ドラフト2位で指名された川相拓也内野手(23)。巨人の川相昌弘ヘッドコーチ(50)の次男だ。
拓也選手は強豪・桐蔭学園高時代は控えで、桜美林大に進んでレギュラーになった。4年間で本塁打はゼロだが、監督が「バントを失敗した記憶がない」と語る、“バントの神様”と言われた父親に似たタイプの選手らしい。
「もっとも、それは首都大学リーグ2部での実績で、プロが評価するような話ではない。ただ、身体能力は高く、守備のいい選手は使い道がありますから、試合に出るうちにバッティングが良くなる可能性がないとは言えない。育成を目的とする育成枠の選手は支度金300万円、最低年俸240万円ですから、化ければもうけものという指名」(スポーツ紙デスク)
それでも、巨人の先輩たちがこの指名をどう思うかといえば、微妙……。
「川相ヘッドはハッキリものを言うタイプで、2軍監督時代、『厳しすぎて今の若い選手には無理』とクレームが出て、原辰徳監督があえて嫌われ役として1軍に呼んだと言われてます。だから選手たちは、普段厳しいこと言ってるのにヘッドは身内には甘い、と捉えている。そもそもトップの原監督が、甥の菅野智之投手を『トモユキ』と呼んではばからない。チーム内は嫌なムードになってます」(ベテラン記者)
このドラフトでは、中日も近藤真市投手コーチ(46)の長男・弘基外野手(21、名城大)を育成4位で指名して、“縁故採用”を噂された。
「近藤コーチは落合博満GMが監督をしていた時代から気に入られていて、森繁和ヘッドにもかわいがられてますからね」(同前)
要はオヤジが会社でどう評価されているか。川相ヘッドの場合、原監督に何かあったときの“つなぎ”の監督候補という話もある。
そこで興味深いのが、プロ志望届を提出しながら指名されなかった桑田真澄氏(46)の長男・真樹選手(22、桜美林大)の例だ。
桜美林高時代もレギュラーではなく、大学4年になってようやくレギュラーになったという真樹選手。
「プロに行きたいと言えるレベルじゃない。だから指名漏れは当然ですが、桑田真澄氏はよく監督候補として名前が挙がる人物。彼を近く監督に迎えたいと考えている球団があったら、恩を売るのに絶好の機会。それがなかったということは、彼を監督として本気で考える球団がないということじゃないでしょうか」(前出デスク)
小粒な選手が多く、“不作”と言われた今年のドラフトらしい話である。
(黒田朔)
※週刊朝日 2014年11月14日号