1次リーグ2戦を終えて1分1敗。決勝トーナメント進出へ後がなくなったザックジャパン。聞こえてくる不協和音、早くもはじまった戦犯探し……。わずかに残された可能性にかけて25日のコロンビア戦に挑む!
ボール支配率68%と圧倒し、16本ものシュートを放ちながら、勝ちきれなかったギリシャ戦。
「結果がすべてなので、勝ち点3をとれなかったことが、何よりも悔しいです」
試合後の記者会見で本田圭佑はこう語った。
日本は2試合を終えて1分1敗の勝ち点1。1次リーグ自力突破の可能性が消え、厳しい状況へと追い込まれた。
現場の雰囲気はどうか。ギリシャ戦を取材したサッカージャーナリストの六川亨氏はこう語る。
「記者会見の際、本田が隣に座ったザッケローニ監督と目を合わせようとせず、しゃべり終わった後、そのまま去っていってしまった。2人の間に距離があるような印象を受けました」
同じような違和感は試合中にも見られたと六川氏は続ける。
「後半12分、大迫勇也に代わって香川真司がピッチに送られたとき、これまでなら大久保嘉人が務めるはずのワントップに、岡崎慎司が入ることになった。大久保は『俺じゃないの?』というような顔をして、ベンチに確認していました。選手と監督の信頼関係に溝ができていないか心配です」
記者会見で「パワープレーは誰の判断だった?」と聞かれたザッケローニは、
「私たちは4年間、技術とスピードを使って成果をあげてきました。残念ながらこの2試合では、それを発揮できなかったというのが、問題だったと思います」
と語ったが、これでは質問の答えになっていない。
欧州の名門クラブチームを率いてきた名将にとっても、短期決戦のW杯は初めての経験だ。あるJリーグの関係者はこう語る。
「この4年間で理想としてきたボールの支配率を高める攻撃的なサッカーに、監督も選手もとらわれすぎたのではないか」
選手のパフォーマンス自体に苦言を呈する声もある。長年にわたってW杯を取材してきたサッカージャーナリストの栗原正夫氏は、現地でギリシャ戦を見た感想をこう語る。
「本田の調子が悪くて、足元にボールが収まりませんでした。そのため、大久保が自分でボールを受けようと中央にポジションを移動して、全体のバランスが崩れてしまった。良かったのは大迫と川島永嗣、内田篤人くらいでしょうか……」
「日本がベースキャンプを張ったサンパウロ州のイトゥ市は、これまでの2試合が行われた会場ほど気温と湿度が高くなかった。チーム全体でコンディションの調整に失敗した可能性は考えられます」(六川氏)
何とも悪い話ばかりが聞こえてくるが、前出の栗原氏によれば、実は良い話もあるという。
「日本にとって幸いなのは、次戦であたるコロンビアが1次リーグ突破をすでに決めていること。コロンビアは強豪ですが、士気が下がっているかもしれません。一方でギリシャに可能性が残ったことも好材料です。もし、日本とギリシャが共に勝った場合、勝ち点は並びますが、得失点差ではこちらが圧倒的に有利です」
ギリシャはFIFAランキングで12位。次戦の相手、コートジボワールの23位よりも上位となっている。ギリシャが勝つ可能性は十分に考えられる。
元日本代表のサイドバックでギリシャ戦ではテレビ解説を務めた都並敏史氏は、
「コロンビア戦はこれまでつくり上げてきた日本らしいサッカーが試される場となるでしょう。今のところ応援する人たちは消化不良を感じていると思うので、がっぷり四つでぶつかって、スッキリする戦いをしてほしい」
と熱いエールを送る。
決戦は日本時間の25日午前5時。まだまだ日本のW杯は終わっていない。
※週刊朝日 2014年7月4日号