
NHKの朝ドラ「あまちゃん」に登場する鉄道のモデルとなった岩手県の「三陸鉄道」。今年4月には3年間にも及ぶ復旧作業を経て、全線がつながる。最前線で尽力した三陸鉄道旅客サービス部長の冨手淳(とみてあつし・53)さんが当時を振り返った。
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振り返れば震災の日、私は本社がある宮古駅の2階にいました。激しい横揺れがおさまらないので「津波が来る」と確信しました。すぐに階段を下りて、駅で列車を待っていたお客様を避難所に案内していると、津波警報が流れてきました。
2本の列車が運行中だったのですが、幸いにも津波の影響がない場所を走っていたので、ひとまず安心しました。それで駅の2階から駅前を見ていたら、商店街の方向から徐々に水が増えてきました。次第にゴミが流れ、車も流れてきた。安全のために駅のすぐ西側にある「出逢い橋」に避難したのですが、雪がパラパラと降っていて、とても寒かったことを覚えています。
2日後、社長と一緒に被災状況の確認に行きました。国道が寸断されていたので遠回りで田老駅にたどりつくと、街は壊滅状態でした。それでも線路の損傷は少なかった。すると社長が「列車を動かせるところから動かそう」と。私も、住民の方が寸断された道路の代わりに線路を歩いているのを見て、とにかく「前に進むしかない」と覚悟しました。
3月16日に一部区間で運行を再開すると、ニュースを聞いた人たちがたくさん集まってくれました。日本全国からの応援の声も日増しに増えて、本当にありがたかった。今でも毎月のように、「使わない定期券」を買って支援してくださる方もいます。こういった方々に支えられて、来月の全線再開まで頑張れました。
※週刊朝日 2014年3月21日号
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