ソチ五輪スノーボード・ハーフパイプ男子の銀メダルが平野歩夢(あゆむ)選手(15)の胸で輝いた。冬季五輪の雪上競技で史上最年少、日本の冬季五輪史上最年少のメダリストとなった。
ソチで取材に当たった「トランスワールド・スノーボーディング・ジャパン」の野上大介編集長は、強さの秘密をこう分析する。
「ハーフパイプは、エアに入る手前ギリギリまで、テイクオフを待てるかが重要です。スケートボードだと、このタイミングは数十倍シビアになる。ソチのコースはハーフパイプの垂直に切り立った部分が通常より長く、跳ぶタイミングをつかむのが難しい。そのなかで高いエアと安定した滑りができたのは、幼少期からスケートボードを滑り込んで、体に跳ぶ技術が染み込んでいるからでしょう」
表彰台がかかった滑りでも、2度の大技「ダブルコーク1080」に挑戦し、完璧に決めた。
技術とともに規格外だったのは、試合後のインタビューだ。興奮する観客とは対照的に、「思ったより緊張しなかった」とマイペース。どんな強心臓かと思いきや、兄の英樹(えいじゅ)さん(18)に素顔を聞くと、意外にあどけない。
「人見知りなので外では無口ですが、家だとはしゃいでますよ。僕が自分の部屋でゆっくりしていると、何度もドアを開け閉めしたり、電気を消したりしてちょっかいを出してくる。年より子どもっぽいくらい」
携帯ゲームの「パズドラ」に夢中な、どこにでもいる中学生だという。
「この2年くらいで急にうまくなったけど、歩夢は全然変わらない。決勝の直前に『意外と調子いいんじゃん?』とLINEでメッセージを送ったら、『余裕だわ』って。メダルを取って調子に乗るようだったら、兄がシメてやらないと(笑)。4年後の平昌(ピョンチャン)五輪は、兄弟で表彰台に立ちたいです」(英樹さん)
次の五輪では、その胸に「金」を光らせてほしい。
※週刊朝日 2014年2月28日号