自動車部品のカルテルをめぐる米司法省の捜査によって、日本で普通に働いていた会社員が米国で実刑を言い渡され、米国の刑務所に収監される「悲劇」が相次いでいる。この「史上最大の事件」は、まだまだ拡大する可能性がある。
原因の一つに、日本企業の体質があるとされる。何が問題で、どう変わるべきなのか。米ワシントンにある有力法律事務所シェパード・ハンプトンで反トラスト法を専門とし、多くの日本企業を顧客に持つ弁護士ジェニファー・ドリスコール・チッペンデール氏(以下、ド)とカルテル事件に詳しい弁護士ドナルド・クラウィター氏(以下、ク)に話を聞いた。
――日本企業はどうして捜査の対象になりやすいのでしょうか。
ド:海外で仕事をする日本人同士ということで、同業者と飲みに行きます。酔って愚痴を言い合って、ポロッと製品の価格の話が出てしまう。これは、米司法省から疑念を抱かれてしまう、非常にリスクの高い行動です。特に日本人は、海外では日本人社会の中で活動することが多いので、気を付けなくてはいけません。
――どのような自衛手段を取るべきでしょうか。
ド:「競合他社と話すな!」です。談合の事実がなくても違法とみなされる場合もあるからです。司法省は、検挙率を上げることに躍起になり、リーニエンシー制度(課徴金減免制度。カルテル摘発の目的で、最初に当局に情報を提供した企業が罰金を免じられることが大きな柱)を利用した企業からの情報の信憑性を確かめずに、「いっせいに価格を変更した」などの事実だけで起訴に踏み切ることもあります。
ク:もし同業他社との会合で価格に関する話が出そうだと感じたら、部屋の外に出ることです。重要なのは、それを周囲に気付かせること。テーブルにある水差しを手に取り、ひっくり返してから出ていくべきでしょう。日本人は礼儀正しいため、そのような行動は難しいかもしれません。しかし、自分の身を守るためには必要なことです。
※週刊朝日 2014年1月17日号