本誌報道により明るみに出た女性初の国会議員・山口シヅエ氏(享年94)の「死亡隠蔽(いんぺい)」事件が、発覚から1年を経て新展開をみせた。隠蔽を指示した“キーマン” のO氏が10月29日、関係者男性らによって警視庁に刑事告発されたのだ。
世にも奇妙な事件を暴いたのは、昨年11月2日号の本誌報道。山口氏が経営する不動産管理会社「山口シヅエガーデン」の共同経営者で元秘書のO氏が、山口氏の病没を半年以上にわたり隠蔽。カムフラージュのため、ヘルパーたちに「遺骨」の世話を続けさせていたのだ。
当時、O氏は本誌の取材に「(隠蔽は)先生の生前の意思だった」と説明したが、状況は実に不自然だった。O氏はなぜか山口氏の死後も、登記上は生きているように見せかけ、代表取締役を「続投」させた。また、不正に自身の役員報酬や賞与を年間計500万円以上も増額。さらに、自分の息子を新たに取締役に加えていたことも判明した。
今回、O氏はこの登記を巡って告発されたのだ。
告発者の代理人を務めるユウキ法律事務所の出口裕規弁護士が語る。
「今回は登記簿にうその記述をした電磁的公正証書原本不実記録罪の疑いで告発しましたが、O氏が自身の役員報酬を増額した経緯や関係者の証言などを総合すると、背任などの疑いもあります」
本誌の記事が出てすぐ、山口氏の代表取締役の登記が訂正され、死去の事実が初めて公表された。その際O氏は「支援者を中心に『お別れ会』を計画している」と表明したのだが……。
その後の経緯について、関係者がこう語る。
「4月の先生の命日に、先生の自宅兼事務所で『お別れ会』が開かれましたが、ごく親しい仲間内にしか声をかけず、他の元秘書や地元の支援者らは、会の存在すら知りませんでした」
O氏は今年6月に代表取締役を退任。7月には同社が営むスポーツクラブの閉鎖が決まったが、その際にこんな文書が発表された。
〈山口先生の貴重な意思にも関わらず、前代表取締役「O(原文は実名)」の不祥事、また、経営管理が不十分で資金を枯渇させる等で施設の経営ができなくなりました〉
子どものいなかった山口氏には相続人がおらず、不動産などの莫大(ばくだい)な個人資産は国庫に入ることになる。
果たして、O氏の目的は何だったのだろうか。
※週刊朝日 2013年11月15日号