連日35度を超える猛暑となった今年の夏。大学受験生たちは予備校などの夏期講習に通い、来春の入試に向けて猛勉強を重ねた。その同じころ、予備校の別の校舎では、高校教員対象の研修が開講されていた。
8月下旬、東京・お茶の水の駿台予備学校で、駿台教育研究所が開催する教員向けのセミナーをのぞいてみた。講座は竹岡広信講師の「英文解釈の指導―2013年の入試問題を解く!―」。竹岡講師は募集開始日に、100人以上入る大教室の定員が満員となる超人気講師だ。受講者は若い先生が多いだろうと思いきや、教室を見回すと意外や意外、年配の先生の姿が目立つ。駿台教育研究所の調べでは、昨年の受講者では約4割を教員歴20年以上のベテランが占めている。
竹岡講師は京都の名門私立・洛南高校でも教壇に立ち、『ドラゴン桜』の英語教師のモデルとしても知られる。その講義を聴くと、目からウロコがばらばら落ちる。英単語や文法の丸暗記を否定し、CDなしの音読や「ノートの左に英文、右に和訳」という指導にもダメ出し。奨励するのは、パラグラフごとにメモをとり、全体像をとらえてから解くことや英文の多読だ。「英語が苦手な生徒には、教師が単語を教えるべきだ」と言い、単語の語源を重視し、派生する単語をいくつも覚える記憶法を板書した。時々笑いをとりながら進む楽しい授業に、受講する教員たちも引き込まれ、熱心にノートをとっていた。
竹岡講師が熱く語る。
「最初は自分の講義の手の内を明かすことに躊躇(ちゅうちょ)もありましたが、そんなせこいことを言っていられません。中学生の英語嫌いが7割を超えたといいます。丸暗記は英語嫌いを助長することが多い。全国の高校の先生に直接教え方を伝えることによって、英語嫌いを一人でもなくしたいんです。入試問題を分析して分厚い資料を作成するのは大変な作業ですが、高校の先生に伝えることが、私の生きがいになっています」
竹岡講師の講座はリピーターが多い。千葉県立薬園台高校の上田明宏教諭もその一人だ。
「07年の夏から自費で約10回参加したうち、半分が竹岡先生です。お話や原則集などのプリントを参考にしています。できるだけフィードバックして生徒に力をつけてほしいし、自分の授業も改善したい」
関西大北陽高校の増渕真紀子教諭も言う。
「5年前から竹岡先生の講座ばかりを6、7回受講しています。教わったことを授業に取り入れ、センター試験の点数がとれるようになりました」
※週刊朝日 2013年10月25日号