デジタルカメラの誕生と進化により、写真の「合成」や「加工」はとても身近なものになった。撮影後にパソコン上で画像を処理することも容易になった。同時に、写真表現としてどこまでの合成、加工が「許容」されるのか、という点は常に議論され続けてきた。その基準は各コンテストでも多様であり、作品のテーマや写真家のスタンスによっても、さまざまな意見がある。
そこで、現在発売中の『アサヒカメラ』3月号では各界で活躍する写真家に写真の合成と加工に関する「哲学」を聞いてみた。今回は風景写真家の宮武健仁さんのインタビューを一部抜粋する。
【写真】比較明合成についての持論を展開した写真家・宮武健仁さん
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ぼくが写真家として独立した1990年代はまだ「デジタルカメラで風景なんて絶対に撮れないよね」という時代でした。
でも、「ホタルとか微弱な明るさの被写体はフィルムよりデジタルのほうが向いているな」と、ひそかに思っていたんです。
高感度にすると派手にノイズが出ましたけれど、フィルムではありえないような感度で撮れましたし、微弱な光でも被写体の色を正確にとらえる能力に気づいていた。
「将来的には、けっこう行けるんじゃないか」と感じていたんです。
あれから20年以上がたちました。デジタルカメラの進化によって、これまで表現できなかったことが表現できるようになりました。動画から静止画を切り出す4Kフォトとか、比較明合成とか。
これは夢のあるすてきな話だと思うんですよ。進んでいく技術をよりよく利用して作品づくりをしていければいい。
合成、ということについては、HDR(※1)だって、ハイレゾリューションモード(※2)だって、「合成」という言葉がつかないだけで、実際にはカメラ内で複数の撮影画像を重ね合わせる合成をしているんです。
比較明合成は「合成」という言葉が入っているから、うそくさいニュアンスを感じるのか、「本物の写真じゃない」、みたいに言う人がいる。