しかし、言葉とはなんと足りないものだろうか。湧き出る歌の半分も、その感動を語ることはできない。もどかしい! だから映画を見てほしい。まだ自分の中の「うた」に気づいてないのなら、なおさら見てほしいと思う。
――それにしても齋藤さん、音楽家たちをおおぜい撮影していますが、うたを自らの中に持ってから、写真は変わりましたか?
「もともと音楽家を撮影する際には、歌詞や音楽の中身といったことをも含めてしまうと、音楽を愛して撮影する人にぼくがかなうわけもないので、音楽の表面上のことではなく、その大元の、大樹としての『にんげん』にフォーカスしてきました。なので、撮影には変化は一切ありません」
すばらしい写真も映画の中で数多く見ることが出来る。それも言葉やうた、コミュニケーションについて考えさせてくれるのだ。
●和田静香(わだ・しずか)/1965年、千葉県生まれ。音楽評論家・作詞家の湯川れい子のアシスタントを経てフリーの音楽ライターに。趣味の大相撲観戦が高じて最近は相撲についても書く。著書に『スー女のみかた 相撲ってなんて面白い!』『東京ロック・バー物語』など。