私たちが提供する精神科医療では、大まかに一般外来をみても「異常の覚知、(周囲からであれば)受診同意の取得、受診、精査、診断、説明、ゴール設定、治療同意の取得、治療、評価、調整、再評価、終診」といった多くの過程があります。もちろん、疾患によっても異なりますし、入院や入所、在宅あるいは活動環境の調整などが必要なケースでは、より複雑になるでしょう。

 それぞれの過程において必要な情報を集め、複数の選択肢の中からその都度決断をしていく。精査、診断、治療の提案を除いても、ご自身や支援者だけで行うのは非常に困難ですし、正解がみえない中で情報を求め続けるご心労ははかりしれません。

 また、早期介入が望まれる場合、二の足を踏むことで状態が悪化してしまう可能性も否定できません。もしかすると、ご自身または大切な人のことで悩み続けることで限界を超え、新たな問題が生じてしまうおそれもあります。

 精神科医療に限ったことではありませんが、患者と家族に寄り添い、問題をしっかり把握、評価したうえで、適切な診断、治療の要否などを説明・協議すること。また、場合に応じて必要な情報(源)を提供することは、われわれ医療者が担うべきところだと思います。

 医療が全てを解決できるわけではないかもしれませんが、悩みを聞き、解決へ向け何らかの助言が得られるかもしれません。信頼を寄せる医師であれば、精神科でなくともよいと思います。改めて、当コラムが、医療が届かず社会で苦しまれている人の目にとまり、一人でも多くの方に、必要な医療が届くきっかけになればと願っています。

(精神科の外来に不安を感じる人もいらっしゃると思います。実際、医療で受けた提案は、ご自身または支援者としっかりと検討することが重要です。精神科外来については、第5回でも取り上げていますのでご参照ください)

 また、願わくばもう一つ。精神疾患における誤解についてです。誤った知識は、当該の事柄だけでなく、それに関わるものについても誤解を生み出してしまうおそれがあります。そしてその誤解は、患者さんにとって不当な評価をもたらすきっかけになってしまうかもしれません。

次のページ
最後に、医療が届かず社会で悩んでいる人へ