精神疾患は、日本の5疾病の一つであり、患者数は平成29年で419万人と増加の一途にあります。しかし、とても身近な疾病である一方で、必要な人に医療が届いているかと問われると必ずしもそうではないようです。千葉大学病院精神神経科特任助教の大石賢吾医師が相談に回答する形で連載してきた本コラム。これまでの連載を振り返りつつ、その理由について考えます。
* * *
コラムを読んでくださっている皆さま、大石賢吾です。実は、仕事の都合から、今回でいったん休載させていただくことになり、ご報告も兼ねて番外編的なコラムの機会をいただきました。せっかくなので、今回はこれまでの連載を経て、当コラムを通してお伝えしたかったことを振り返りたいと思います。
医療が届かず苦しんでいる人たちへ必要な医療が届いてほしい。約1年前、その思いで連載を受け、恐縮ながらもこれまで、「認知症」や「発達障害」に関連したご相談にお答えする形で進めてきました。皆さまからは、共感やもう一歩先の相談、答えきれていない部分への意見など、たくさんの反応をいただきありがたく思っています。
精神疾患は、日本の5疾病の一つであり、患者数は平成29年で419万人と増加の一途にあります(厚生労働省HP:みんなのメンタルヘルスから)。また、精神疾患では、症状が患者の行動に反映されることが少なくありません。それゆえ、周囲に影響を与える機会も生じやすく、肌感覚でも他疾病と比べて覚知されやすい一面があるのかもしれません。
しかし、とても身近な疾病である一方で、必要な人に医療が届いているかと問われると必ずしもそうでないように思います。皆さまからの意見を拝見していると、「悩みに対して正しい情報がほしいけど、どうしてよいかわからないから二の足を踏んでしまう」というお悩みが多いように感じていました。
精神疾患が多元的で事例性が高い第10回(2019年8月15日配信参照)ということだけでなく、インターネットを介して多様な目的に基づく情報が無限に広がる現代社会では、正しい情報だけを収集するということは、とても難しい課題です。