覚渓駅前で撮影。のどかな田園地帯をITXセマウル号が突き進んで行く(撮影/植村 誠)
覚渓駅前で撮影。のどかな田園地帯をITXセマウル号が突き進んで行く(撮影/植村 誠)
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覚渓駅に掲げられた1日1本だけの列車時刻が記された時刻表(撮影/植村 誠)
覚渓駅に掲げられた1日1本だけの列車時刻が記された時刻表(撮影/植村 誠)
小さな待合室のほかは何もない両元駅(撮影/植村 誠)
小さな待合室のほかは何もない両元駅(撮影/植村 誠)
両元駅に停車中の観光列車「V-TRAIN」(撮影/植村 誠)
両元駅に停車中の観光列車「V-TRAIN」(撮影/植村 誠)

 鉄道趣味の1ジャンルとしてすっかり定着した感のある“秘境駅”。人里遠く離れた山あいや原野に位置し、1日の利用者がときに0人ということもある浮き世離れした駅は、その歴史や背景などを含め興味をそそらずにいられない存在なのかもしれない。数ある“秘境駅”のなかから、ちょっと趣向を変えてお隣・韓国の駅模様を探ってみた。

【写真】マジ、誰もいない!この韓国の秘境駅がまさかの観光地に?

*  *  *

■停車列車1日わずか1本。降りたら帰れない不思議な駅

 車掌がホームに立って、列車から降りるや撮影に興じるこちらの様子を窺っている。ふと目線が合うと、訝しげな表情が読み取れた。

「降りますから!」

 身ぶりを交えて、この駅で降りることを知らせる。普通なら、乗客がホームに降りれば下車と思われるのが当たり前だが、車掌の様子からきちんと知らせたほうがいいと思ったのだ。

 車掌も得心したのか、乗降口に乗り込むと前後を確認し扉を閉めた。列車がソウル方面へと出発してゆく。乗ってきた列車が立ち去ると、対面式2面2線ホームに静寂が訪れた。

 覚溪(カッケ)駅である。場所は韓国中部。ソウルと釜山とを結ぶ京釜(キョンブ)線のなかほどに位置する駅で、このときの旅はこの駅を訪問するのも重要な目的であった。

 きっかけは、いつものようにWEBで調べものをしていたときであった。ハングル文字で入力しながらあれこれチェックしていたさなかに、この奇妙な駅に遭遇したのである。

「ん? 1日にたった1本しか列車が停まらない?」

 なんと、この駅に停まる列車は、さっきまで乗っていた東大邱(トンデグ)発栄州(ヨンジュ)行き「ムグンファ号」だけなのである。つまり、7時07分に列車が発車してしまうと、翌朝7時06分まで列車に乗ることができない駅なのであった(列車時刻は取材当時。2020年2月現在は7時11分着・12分発)。

 個人的に、“秘境駅”という言葉が広く使われる以前から、折を見てこうした乗下車困難な駅を訪ねていた。2016年3月に廃止された山田線の大志田(おおしだ)駅や芸備線と木次線とのジャンクション・備後落合駅などはとくに印象に残っているが、そんな“ノリテツ”が外国でも同じような所業に及ぶのはごく自然なことなのかもしれない。

 それにしても、1日1往復ではなく片道1本きりしか停車列車がないとは……。

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人はいないが次々と高速列車がやってきて楽しい!