念のため、韓国鉄道公社(KORAIL)の公式サイトでチェックしてみたところ、答えは変わらない。朝7時台の停車ということは、覚溪駅から仕事や所用などで乗る人のためのダイヤだと思われるが、乗ったが最後、列車では帰ってこられないのである。一体全体、どういう駅なのだろうか。
覚溪駅に降りてみると、駅の北側、下りホーム側には水田や果樹園が広がるなかに家屋がチラホラ。上りホーム側には永同川を挟み耕作地が広がっているのが見える。私が降りた列車にこの駅から乗ったのは2人。降りたのは私ひとりだったが、利用者はいるのである。
下りホームにはわりとしっかりとした造りの駅舎があり、なかを見てみるとどうやらかつては出札窓口があったらしい。壁には1日1本だけの列車時刻が記された時刻表。ハナから上下3行ぶんしかないが、それすら見事に空欄ばかりとなっている。
そんな閑散とした駅だが、走っている線路は韓国最大の幹線だ。長距離輸送の主役を高速鉄道KTXに譲った感はあるものの、ホームに佇んでいると次々と列車がやってきて楽しい。北寄りに延びる通りの先には京釜高速線(KTX)の線路が通り、時速300キロで列車が駆け抜けてゆく。
ところで、さっき列車に乗り込んだ2人は、どうやってこの駅に戻ってくるのだろうか。いや、それ以前にこんな駅に降りてしまった私はこれからどうすればいいのだろう?
タネを明かせば、線路の南側に幹線道が走っており、駅から600メートルほどのところにバス停があるのであった。本数は決して多くはないものの、覚溪駅の両隣にあたる永同駅や深川(シムチョン)駅などへのエスケープが可能。永同駅は停車列車も多く、私もこのルートを使って次の目的地へと向かった。
■じつは韓国でも“秘境駅”は注目株
ところで、WEB検索をしてみると、この覚溪駅訪問を楽しんでいる韓国人が決して少なくないことがわかる。国は違えど、同好の士としてうれしくなってしまうが、観光地と化した“秘境駅”も韓国で登場している。
「えっ? 両元(ヤンウォン)ですか!?」
「ええ……」
駅窓口で乗車券を所望したら、駅員からすっとんきょうな表情で聞き返されてしまった。そんな駅に、それも外国人が行くというのがよほど意外に思えたのだろうか。
「フフフフ。日本のノリテツを侮ってはいかんぜ」
と、意味もなく胸を張ったワケでもないが、無事に乗車券を手にし、夜も明けない春陽(チュニャン)駅6時44分発の「ムグンファ号」に乗り込んだ。