この記事の写真をすべて見る
「人間は進化したら何になるの?」
「どうして、“わたし”は“わたし”なの?」
発想豊かな子どもの疑問に大学教授が本気で答える連載「子どもの疑問に学者が本気で答えます」。子どもに聞かれて答えられなかった疑問でも、幼い頃からずっと疑問に思っていることでも、何でもぜひお寄せください。明治大学教授の石川幹人さんが、答えてくれますよ。第9回の質問は「青色の野菜や果物がないのはなぜですか?」です。
* * *
【Q】いろいろな色の野菜や果物があるけれど、青色のものがないのはなぜ?
【A】空の色と同じであると目立たないからです。
みなさんは色水遊びをしたことがありますか。私は小学生のころ、夏休みにはよく色水遊びをしました。花や野菜を水中でもんで色を出します。青い色水は涼しい気分にさせてくれるので、とくに好きでした。青色を出したいときは、アサガオやツユクサをつんできて作りました。
アサガオやツユクサは青い花をつけます。つまり、青色の花や実をつける植物がまったくないわけではないのですが、確かに少ない。これには理由があります。空の青色に近い植物は目立たないので、子孫を残すのに都合が悪いからです。
そもそも、花や果実に色がついているのは、昆虫や鳥に見つけてもらうためです。昆虫や鳥が体に花粉を着けて運んでくれたり、実を食べたあとに種を遠くに蒔いてくれたりすることで、その植物の子孫が繁栄します。その証拠に、風に花粉や種子を運んでもらう仕組みを持つマツやスギは、地味な暗い色をしていますね。昆虫や鳥に見つけてもらう必要がないので、目立った色にはならなかったのです。
それからもうひとつ。栄養のある実をつけたほうが、それを求めて昆虫や鳥がより集まりやすい。結果として、繁殖を動物に頼る植物の花や果実には、目立った色彩を持っていることと、栄養があることという二つの条件が備わったのです。その結果、栄養のある植物は赤や黄色といった目立った色を持つようになり、そういった色彩が私たちの目に触れるようになったのです。
逆にマツやスギは寒い地域に多く生えていますよね。土の栄養が少ない地域では栄養のある実をつけにくく、昆虫や鳥が集まらないため、繁殖を風に頼るしかなくなったのです。