陸上競技部駅伝ブロックの前田直樹監督は、日本体育大時代に箱根を走り、東京農業大監督として7回連続を含む8回の箱根駅伝出場を果たしている。

 また、芝浦工業大には「公募制推薦入学試験(駅伝)」という、理工系単科大学としてはめずらしい駅伝推薦制度がある。

 箱根駅伝に出る。大学とすれば、これほど励みになることはない。正月の全国放送である。大学の名前を全国に広める広告塔という側面も大きい。箱根に出て志願者が急増した、難易度が上がったという話はあまり聞かない。大切なのは、大学名が周知されることだ。いまでも山梨学院大、大東文化大といえば、「箱根駅伝」を連想する人は多い。山梨学院大のマヤカ、オツオリという名前は、案外、記憶に刻まれているものだ。

 大学にとってもう一つ大きいのは、愛校心、帰属意識が高まることである。学生、保護者、教職員、OB・OG、地域住民が一緒になって盛り上がる。大学の活性化につながる。そして、大学が元気になる。開学まもない大学や、歴史と伝統がある理工系単科大学が箱根駅伝に力を入れる理由がここにある。

(文/教育ジャーナリスト・小林哲夫)<文中敬称略>

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小林哲夫

小林哲夫

1995年より『大学ランキング』の編集者。『筑駒の研究』(河出新書)、『学校制服とは何か その歴史と思想』 (朝日新書)、『女子学生はどう闘ってきたのか』(サイゾー)、『旧制第一中学の面目』(NHK出版新書)、『東大合格高校盛衰史』(光文社新書)、『早慶MARCH大激変 「大学序列」の最前線』(朝日新書)など、教育・社会問題についての著書多数。

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