「ウンチ出たい」。なんということでしょう。主語、ウンチ。ウンチ目線。ウンチに寄り添い、ウンチの気持ちを代弁した、なんともチャーミングな方言だと僕は思います。思うんです。思うんだから仕方ありません。「ウンチの気持ちを代弁」ってなんだよという気もしますが、そうとしか思えません。「ちょっ、もう出たい。俺、いい加減出たい。もう充分。俺、もう充分やったはず。やるべきことは充分やったはず。俺、悔いはない。だからもう出たい。俺、マジで出たい」。こんな感じだと思います。思うんです。思うんだから仕方ねえだろうがこの野郎。おっと、ごめんなさい乱暴な口を。そして、ウンチの性別を男性にしたのはあくまでイメージです。「ウンチの性別」ってなんだよ。あと、いま気づいたけど「ウンチの気持ちを代弁」ってアレだね、大便&代弁だね。ふふふ。皆さん! この度デビューした新人デュオ「大便&代弁」です! デビュー曲のタイトルは「大便代弁さあ大変」。聴いてくださ、これ今回マジで担当K氏に怒られるな。撤退。怒られる前に撤退。チンチンに続き、ウンチも撤退。

 方言の尊さについて書こうと思ったのに、いつの間にか若干(?)変な方向性の話になってしまいましたが、おかしくもチャーミングで魅力ある方言たちを後世にしっかりと残していきたい。さっきまでチンチンとウンチを連呼してた人間が言っても説得力がないかもしれませんが、本気でそう思います。

 ちょうどこの記事を書いた夜、行き着けの居酒屋で呑んでたら、アルバイトの大学生が「地方出身の友達が羨ましい」と言いました。彼女は東京生まれ、東京の大学に通っているとのこと。理由を聞いた僕に、彼女は真顔で「だって、方言が喋れるから」。

 うん。君のその感覚、大事にな。オジサン、大便代弁さあ大変とか言ってる場合じゃなかったよ。謝る。とろっくっしゃあこと言っとってどえらい悪かったがや(アホなこと言って本当にごめんなさい)。(文/佐藤二朗)

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佐藤二朗

佐藤二朗

佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家、映画監督。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や映画「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。著書にツイッターの投稿をまとめた『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)などがある。96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がけ、原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)がBD&DVD発売中。また、主演映画「さがす」が公開中。

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