結果的に、西巻はロッテに移籍する形になった。実際に楽天がプロテクト外しを狙っていたのかはわからない。今季は茂木と浅村が活躍したことから、西巻は「来季はじっくり育成する」というプランになったことも理解できるからだ。また、プロテクト外しを狙った戦力外には、前述のように他球団への移籍というリスクがあり、ルール上の問題もない。
ロッテにとっては、西巻は「欲しい選手」の一人だったはずだ。仮に鈴木大地が退団となれば、レギュラーの中村奨吾内野手(27)の控えセカンドが補強ポイントの一つとなる。ロッテには西巻の2学年先輩で、2015年夏の甲子園大会で仙台育英が準優勝したときのチームメートである平沢大河内野手(21)もいる。平沢と西巻が二遊間でコンビを組めば、仙台で話題になることは確実。地元・楽天のお株を奪う人気になる可能性も秘めている。その西巻がロッテに入団したことは、プロテクト外しは一時的な“目くらまし”にしかならないことを明らかにした。
それでも、FAで選手を獲得したい球団にとって、人的補償制度は悩みの種だ。一時的な戦力外という手段を使ってでも、1人でも多くの選手を残したいと思うのも当然だろう。
巨人の原辰徳監督(61)は11月4日、FAで選手を獲得したことで強制的に移籍させられる選手がいることに「そのこと(人的補償)になった途端、(FA移籍が)暗いニュースになる」と指摘。人的補償制度の廃止を訴えた。
しかし、一部の球団に実力のある選手がFAで集中してしまえば、戦力の均衡が崩れ、2軍にいる将来有望な選手が、1軍での出場機会が減ってしまうという問題もおきる。
そこで労組プロ野球選手会は、2軍選手の「飼い殺し」を防ぐため「現役ドラフト」の導入を訴えている。通常のドラフトは、アマチュアの選手を指名するが、現役ドラフトでは各球団で「実力はあるけど出場機会に恵まれていない」選手が対象になる。
米国や韓国ではすでに導入されていて、米国ではヨハン・サンタナ投手が移籍後にサイ・ヤング賞を獲得したこともある。日本野球機構(NPB)も導入に向けて前向きだ。
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