秋と言えば行楽シーズンだ。週末には紅葉狩りなどを計画している方もいるのではないだろうか。家族そろっての遠出となれば車を運転する機会も増えるが、”あおり運転”の被害にはあいたくないものだ。
犯罪心理に詳しい明星大学・心理学部の藤井靖准教授に、加害者の特徴やあおり運転に遭遇したときの対処などについて話を聞いた。
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■”あおり運転”の加害者に共通する心理とは
今年8月、茨城県の常磐自動車道で前を走っていた乗用車をあおったうえ、無理やり停車させて運転手の男性の顔面を複数回殴打したとして、会社役員の宮崎文夫容疑者が逮捕された。
「報道によると、宮崎容疑者は一流大学を卒業し、大手企業に就職するなど学力の高い方のようですが、一方で人とのコミュニケーションが苦手なようです。一般的に、社会的な地位が高い人ほど、『非認知能力』と呼ばれる忍耐力や、社会性、感情のコントロール力など、学力以外の能力について高いものを周囲から期待されます。そこで失敗経験を重ねてしまったのではないでしょうか。周りからの評価によって自己肯定感が抑圧されれば、自分で自分を認めてあげるしかない。するとその反動で人間は相手をコントロール下に置こうと、対人関係において常に威圧的な態度をとるようになります。その一端があおり運転として表出したのかもしれません」(藤井准教授)
同乗者の存在も影響を与えたという。
「価値観が近い複数人で意見を言い合うと、より過激な結論が導き出される『集団極性化』が起きやすい。昨年、ハロウィーンでにぎわう渋谷で、軽トラックがひっくり返されるなどの暴動が起きたのも、極性化によるものだと言えます。人数が多いほど、互いの意見が少しずつエスカレートして過激になっていきます」
被害者のドライブレコーダーには、同乗していた喜本奈津子被告が車から降りて、被害者に向かってカメラを向けたり、ドアを開けようとしている様子が写っていた。