日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は、自身も1児の母である森田麻里子医師が、「子どもの自殺とドラマの関係」について「医見」します。
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夏休み明けの9月は、自殺が増える時期です。
平成27年度の自殺対策白書では、40年間の平均でもっとも自殺が多いのは9月1日であると報告されました。長期休暇の後、特に夏休み明けには最も自殺者が増えることがわかっています。小学生では家族関係、しつけが動機となっている事が多く、年齢が上がるにつれ、学業や進路に関する悩み、学校問題などの動機も増えてきます。
そして、メディアが自殺のきっかけになる可能性も指摘されています。ネットフリックスの「13の理由」というドラマは、2017年3月31日にシーズン1が公開され、大人気となりました。しかし、ここで描かれている自殺シーンが非常にリアルで、若者を刺激し、模倣による自殺を増やす可能性があると指摘されたのです。
ある人の自殺の後にそれを模倣して複数の人が続いてしまう現象は、群発自殺と呼ばれています。実は古くから報告されており、18世紀には、日本では「曽根崎心中」、世界では「若きウェルテルの悩み」といった物語による群発自殺が起こりました。現代では30年前の「ユッコ・シンドローム」をはじめとして、自殺報道についても大きな問題となっています。
群発自殺が最も多いのは、10代後半です。大人より精神的に未熟で他人や物語からの影響を受けやすいことに加え、もっと幼い子どもたちよりも自殺を実行に移す力を持っていることが理由として考えられています。
リスクを高める要因としては、自殺をした人と年齢や性別、悩みの状況が似ていたり、自殺した人が著名人やセレブリティで、高い評価を得ていたりするといったことがあげられます。そのためWHO(世界保健機関)はメディア関係者に向けたガイドラインも発表しており、過剰に繰り返し報道しない、手段を詳しく描写しないなど、自殺を防ぐ報道のあり方について記しています。