そこで、どのようにミルクを補えば、母乳育児にチャレンジしたいママを上手にサポートできるかが、研究されています。今回アメリカで行われた研究によると、ある方法でミルクを補ったところ、産後の入院中にミルクを足しても、生後6カ月時点で母乳育児を続けている割合には明らかな差がないことがわかったのです。

 この研究は、新生児の赤ちゃんで、体重減少の大きさが上位25%に入っていた子を対象に行われました。上位25%というのは、出生体重からおよそ8~10%以上の体重減少にあたります。条件を満たす164人の赤ちゃんを2グループに分け、一方のグループは医療者からの指示がなければミルクを足さず、もう一方のグループでは母乳の分泌がよくなるまで、毎回の授乳後に注射器のシリンジを使って10mlのミルクを飲ませてあげたのです。

 すると、生後6カ月時点で母乳育児を続けていたのは、ミルクを足さなかったグループでは77%、足したグループでも65%でした。母乳育児を続けるというのは、母乳とミルクの混合育児も含んだ数字です。ミルクを足さなかった方が母乳を続けている子が多い傾向にはあったのですが、2つのグループ間で統計的に差があるとはいえないという結果になりました。

 そもそも、なぜ入院中にミルクを足すと母乳を早くにやめる割合が上がるのかはよくわかっていないので、なぜこのような与え方が良かったのかも明らかになってはいません。まだ最適な方法が決まっているわけではなく、実際に赤ちゃんにミルクを与える基準や、どのように与えるかについては、施設によって様々に異なっているのが現状です。

 しかし、母乳とミルク、それぞれのメリット・デメリットを知ったうえで、子育てをする当事者のママ・パパの希望が叶えられるよう、医療者がうまくサポートしていければ良いのではないかと思いますし、こういった研究が少しずつ進んでいるのは、親として心強く思いました。

○森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

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