最速97マイル(約156.1キロ)の速球とスピンの効いたカーブを持つとはいえ、スチュワートは19歳だ。ブレーブスが懸念した右手首が万全でも、異国の環境に馴染めず、それがピッチングに影響を及ぼすことも考えられる。スチュワートが日本で成功できなければ、他の選手はこのルートに二の足を踏むだろう。成功した場合でも、「ドラフト入団→マイナーリーグ→メジャーリーグ」という通常のルートが、すぐに廃れるとは思えない。鳴り物入りで来日したメジャーリーガーが期待外れに終わった例は、決して少なくない。

 現時点で言えるのは、アマチュアの選手からすると、現実に存在する選択肢が一つ増えたということだ。これまでも、ドラフトで指名された選手が日本行きを仄めかし、交渉材料に用いたケースはあったが、実行した選手はいなかった。スチュワートにとっても、肝心なのは、パイオニアになるかどうかではない。自身の成功だ。キャリアの最初に700万ドルを得ても、その先が約束されているわけではない。

 まだ誰も経験したことのないチャレンジが、ここから始まる。(文・宇根夏樹)

●プロフィール
宇根夏樹
1968年三重県生まれ。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライターとして、『スラッガー』などに執筆している。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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