こうした声や動きを見聞きするたびに、私は「教育委員会や校長が動けば、すぐ変わるのに」と思っていました。取材した先生たちからも「管理的な教育をやめたくても教育委員会が許さない」などの声も聞いてきたからです。



 ところが今年3月、広島県福山市にある城東中学校や教育長に取材をし、状況はそんなに単純ではないことを痛感してきました。

■教師の反発「今まで通りのやり方を」

 広島県では現在、県の教育長を中心として改革が進められています。

 県教育長・平川理恵さん(2018年就任)や、福山市教育長・三好雅章さん(2014年就任)は、就任後、管轄するすべての学校を訪問し、「管理的な教育を見直して子どもたち一人ひとりに寄り添った多様な学びを目指してほしい」と訴えてきました。しかも、三好教育長の場合は日常の様子を見るため"抜き打ち"で訪れました。

 しかし、教員たちからは「今までどおりのやり方を」という声が根強かったそうです。県教育長に対して「言わせときゃいいんよ。教育長はすぐに代わる」という教員たちの陰口も漏れ伝わってきたそうです。

 福山市内の中学校にも「ポニーテール禁止」や「掃除中は私語禁止」などの細かい規則が多々あります。こうした校則をどう変えればいいのか、生徒会を通して子どもたち自身に検討してもうことにしました。

 ところが結果は「現状より厳しい校則に、という結論が返ってきました」(三好教育長)。

 なぜ子どもたちが校則をより厳しく管理的なものにしたいと思ったのか。理不尽な規則でも慣れてしまったのか、代案が浮かばなかったのか、その真意はわかりません。しかしこれまで取材してきた経験から言うと、憶測ではありますが「子どもが先生に忖度したんだな」と私は感じました。子どもたちは「どんな校則にしたい?」と聞かれたとき、怒らせてはいけない先生の顔色を見て「もっと厳しくしたほうがいいです」と答えてしまったのかな、と。

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