神戸にとって2つ目の失敗例は、2004年2月に獲得した元トルコ代表FWイルハン・マンスズだ。2002年日韓ワールドカップのアイドルに対し、クラブは移籍金5億、年俸3億5000万円ともいわれる巨額を投じたが、古傷を抱える右ひざの状態悪化などでプレーしたのはわずか3試合のみ。結局、6月にクラブに無断で自宅のあるドイツに帰国し、そのまま退団するという信じがたい顛末になったのだ。“イルハンフィーバー”で練習場のいぶきの森は一時的に活況を呈したが、すぐにスターが逃げたことで、「神戸は9億円をドブに捨てた」とも揶揄された。
こうした2つの例があったせいか、その後の神戸は長い間、堅実な外国人補強に徹していた。2007~2011年にかけて在籍したボッティ、2014年にJ1・14得点を挙げたマルキーニョス、2014~2016年に活躍したペドロ・ジュニオールなどは優良ブラジル人だったし、キム・ナミル、チョン・ウヨン、キム・スンギュといった韓国代表選手たちもいい働きを見せていた。その堅実路線ではJ1制覇やACL出場権獲得が叶わなかったのも事実だが、ワールドカップ優勝メンバーをかき集めるという現路線への転換はあまりにも大きなギャップがあったのではないか。
これで万が一、ポドルスキやビジャがかつてのラウドルップやイルハンのように出て行ってしまったら、チームのダメージは大きい。そんな懸念をしている矢先に、今度は元スペイン代表MFのダビド・シルバ(マンチェスター・シティ)を獲得するという報道も飛び出した。果たしてそれは現実になるのか。神戸はこの先、どうなっていくのか。吉田監督の手腕はもちろん注目されるところだが、それ以上にクラブ幹部や強化部門の方向性が問われてきそうだ。