みそ汁と健康に関することわざはたくさんある。「みそ汁は朝の毒消し」「みそ汁一杯三里の力」「みそ汁は医者殺し」「医者とみそは古いほどよい」「生みそは腹の妙薬」など。みそ汁などの大豆製品を取っていると、脳梗塞や心筋梗塞になりにくいという日本のデータがある。

 ただし、女性のみの利益で、男性ではそのような健康利益は確認されなかった(Kokubo Y et al. Circulation. 2007 Nov 27;116(22):2553–62)。大豆にあるイソフラボンがよかったのでは、といわれている。みそなどは塩分が多いので、そのへんのリスクが相殺されて男性には効果がなかったのかもしれない。塩分のとり過ぎは高血圧、そして脳梗塞や心筋梗塞のリスクになるからだ。

 イソフラボンは女性ホルモン様の作用を持つポリフェノールだ。脳梗塞・心筋梗塞の予防効果が一番大きかったのは、女性ホルモンが減少している閉経後の女性だった。しかし、これ以外にはしょうゆやみそ製品の健康効果を吟味した臨床論文は見つけられなかった(動物実験はあるようだが)。

 みそが本当に「医者殺し」なのかは微妙なところだ。しょうゆも同様だ。最近、電車のつり広告で長生きできるみそ汁、みたいなタイトルの本を見つけたけれども、このような事実を実証した医学論文は見つからない。怪しいものだとぼくは思う。逆に、大豆製品は心臓病やがん、全死亡を減らさない、というメタ分析も最近発表された。

 Namazi N, Saneei P, Larijani B, Esmaillzadeh A. Soy product consumption and the risk of all-cause, cardiovascular and cancer mortality: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. Food Funct. 2018 May 23;9(5):2576–88.

■関心が高い割に検証が不十分な日本

 日本の発酵食品は健康によい、とよくいわれる。しかし、その理論的な仮説の有無はともかく、これを実際に検証した医学的研究、吟味がまだ不十分で、むしろ反証……そうではないという実証データのほうがでてきているのだ。

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特定保健用食品の真実