「アルバイトや少し働いた会社では、何が原因だったか忘れちゃいましたが、気に食わない上司に暴言吐いてクビになりました。20代の生意気盛りでしたね(苦笑)」
その後、デザイナーはやめて堅気のOLになろうと、張り切って事務の仕事についたエミさん。
「でも、その会社には電卓がなくて、そろばん。お局さまにいじめられながら、教本でそろばんを習う日々。それに、『僕はブラックで、私はお砂糖3つね、俺は日本茶!』というようなお茶汲みを、朝と昼にやらなくてはならなくて……」
OLの仕事は2カ月しかもたず、結局友人にデザイン会社を紹介してもらうことに。何だかんだで、デザイナーのブランクは2年ほどになっていた。
「『仕事ができなくてもいいから来て!』と言われて入社したものの、久しぶりに現場に戻って愕然としました。文字の大きさはこれでいいのか、行間は整っているのか、色はこれでいいのか……、たった2年のブランクでデザイナーとしてのスキルが飛んでしまっていました」
エミさんは、「デザイナーのような仕事は現場を離れるとダメなんだ」と、このとき痛感したと言う。それでその後は、デザイナーを続ける限りは現場を決して離れないようにしようと誓った。そして、その会社で22年働いた。
■年金をもらうために25年は絶対に働く!
また、長く勤めたいもう1つの理由があった。
「仕事一筋で、若い頃は結婚すると思っていなかったから、1人で生きていけるために、とにかく年金がもらえるよう25年(注:平成29年8月1日からは、資格期間が10年以上に変更)は仕事をしようと思ってました。25年という数字を頭に刻み込んでいたんです」
短大を出て、20~22歳まで会社員、23~24歳までフリーター、24歳から46歳まで会社員、それで通算24年。もう少しで25年だったが、避けられない景気の波が押し寄せる。
「25年以上勤めたいわけですから、何があってもしがみついていようと思ってたんですよ。だけど会社が倒れかけ、仕事がない人はリストラされ、給料は減り、人がどんどんいなくなっていきました。会社にはいたいけれど、私が恐れているのは年金がもらえなくなるということ以外に、デザイナーとしてのスキルがなくなること。仕事がないのに会社にいることは耐えられませんでした」