次に蒸した米から「麹」を作る。麹とは米に麹菌を加えたものだ。麹というのは難しい漢字を使う。なんで、麦と米が入っているんだろ、とぼくは長年疑問に思っていた。もともとは麹は「※参照1」のように書く。手元の漢和辞典(新漢語林MX)によると、右部分の「※参照2」は「音符」の意味なんだそうで、麦に音符をくっつけて、蹴鞠(けまり)を意味したのだそうだ。麹菌が繁殖したときに蹴鞠のまりのように見えるから、この漢字を当てたのだとか。

 麹の音読みは「キク」、訓読みは「こうじ」だ。前出の北本勝ひこ氏の『和食とうま味のミステリー』によると、両者の読み方が違うのは、中国から酒造りの技術が輸入されてきたとき、すでに日本には独自の麹があったことを(そして、日本とは別に中国でも酒造りが行われていたことを)意味しているのだとか。現在の研究でも中国の麹菌と日本の麹菌は別物で、由来が違うのだという。

 前述のように、中国ではそもそも米を蒸さずにナマのままで造るし。ちなみに糀(こうじ)という漢字もある。これも米の上に花が咲く(ように見える麹菌)、という麹の見た目をイメージしたものだそうだ。

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