巨人の原監督と主砲として期待される丸佳浩 (c)朝日新聞社
巨人の原監督と主砲として期待される丸佳浩 (c)朝日新聞社
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 大型補強した巨人の中で、最も計算できる選手が丸佳浩だろう。リーグ3連覇した広島の中心選手で17、18年にはMVPを獲得。巨人でも主軸として期待がかかるが、他球団のスコアラーは興味深い分析をしていた。

「丸はホームランバッターではありません。昨年は39本塁打を打ちましたが、シーズン終盤は本塁打を意識したせいか調子を崩したように見えました。東京ドームはマツダスタジアムより本塁打が出やすいかもしれませんが、内角攻めも例年以上に厳しくなるでしょう。長距離打者としての重圧がかかりすぎると強引なスイングになって、丸本来の良さを見失う危険性があります」

 昨季は打率・306、39本塁打。タイトル争いにも加わったが、意外にも30本塁打以上打ったのはプロ11年目で昨年が初めてだった。丸の入団会見に同席した原監督は「チーム編成上、左の長距離砲が必要だった」と強調した上でこう獲得理由を明かした。

「ジャイアンツで左の長距離砲といえば松井であったり、高橋由伸であったり、まさにそのふたりとダブらせた。彼らに勝っている守備力、走力であることも、彼がFA宣言したら即座に獲得に乗り出した」

 だが、左の長距離砲という評価には疑問符が付く。広島で定位置を獲得した13年からの本塁打数は14、19、19、20、23、39。まだ29歳と若いことから今後の野球人生で本塁打を量産する可能性は十分にあるが、13年に盗塁王を獲得するなど元来はスピードが武器の中距離打者に近い。

 丸も自身のプレースタイルを自覚している。記者会見で「原監督と何度グータッチをしたいか?」と聞かれた際に、「ホームランバッターではないと思っています。できることなら20回以上はしたい」と答えた。20回は謙遜した言葉かもしれないが、「ホームランバッターではない」の言葉は本音だろう。

 一番の強みは出塁率だ。選球眼が良く、昨季は74年の王貞治以来44年ぶりとなる史上2人目のシーズン130四球を記録。出塁率・468はリーグトップだった。つなぐ打者としての能力は非常に高いだけに、本塁打を要求されるとボール球を振り、良さが消えてしまう危険性がある。原監督が存在をダブらせた松井秀喜は天性のホームランアーティストだ。本塁打王を3度獲得するなど日米通算507本塁打を放ったが、丸の持ち味は違う。周囲の声や重圧に惑わされず自身のプレースタイルを貫けるかが、巨人のV奪回へ大きなカギを握るだろう。(今中洋介)