インターネット上では相変わらず写真が無断使用され、その価値が毀損されている。この時代にわれわれはどう向き合うべきか。アサヒカメラ1月号では、著作権侵害と闘い続ける二人の写真家、有賀正博、岩崎拓哉を招き、弁護士の三平聡史、アサヒカメラ編集長の佐々木広人の4人で座談会を実施。ここでは、誌面で収録しきれなかった話も含めて3回に渡ってお届けする。悪化する著作権侵害とどう向き合うべきか、そして、解決策とは――。第2回の今回は、裁判までの流れを語る。
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岩崎 以前の僕は、写真を無断使用しているサイトやブログの管理人に対して損害賠償請求することが多かったんです。使用料を請求しても相手が無視を続けたり、示談交渉が決裂したりすると、やむを得ず裁判に持ち込むことになります。今まで敗訴したことはなく、ほとんど和解によって解決しています。
でも、ここ半年くらいは匿名の個人や連絡先不明の企業が運営するブログやサイトの無断使用に対抗すべく、プロバイダーに発信者情報開示請求する機会が増えています。約150件の請求に対して、約7割は開示されています。
ちなみに掲示板やまとめサイトを運営するプロバイダーは開示されやすいのですが、インターネットへの接続サービスだけを提供するプロバイダーは契約者(無断使用者)の情報開示に慎重。前者はせいぜいサイト利用時に登録されたメールアドレスくらいですが、後者は住所などの個人情報を多く持っているからです。ただし、裁判に持ち込むと開示されることが多いですね。
三平 多くの個人情報を持つプロバイダーは契約者とのトラブルを恐れて慎重になりがちですが、逆に裁判所からの命令があれば文句の言われようがないので、素直に応じてくれるところはありますね。
岩崎 あるプロバイダーから、「任意での開示請求には応じられません。ただし3カ月は証拠を残しておくのでその間に裁判所に申し立ててください」と言われたことがあります。「裁判所の命令が出たら開示するからよろしくね」と言わんばかりの親切ぶりで(笑)。自社だけで判断したくないってことなんですよね。
三平 企業ではコンプライアンスの意識が高まっていますから、どうしても慎重になる傾向があります。