●日本の歴史を助けたイノシシ

 イノシシに助けられた人物に、和気清麻呂(わけのきよまろ)の伝説がある。奈良時代の貴族で、時の天皇(称徳天皇)に取り入り次期天皇になろうとした僧・道鏡の企みを阻止した人物として知られている。それを阻もうとした道鏡に清麻呂は暗殺されかけるのだが、これを助けたのがイノシシの一群だったと伝わっている。和気清麻呂を祭神とする京都・護王神社には、狛犬ならぬ狛猪が鎮座していて、「いのしし神社」とも呼ばれている。この話は、昔はかなり有名で明治から昭和初期まで使用されていた紙幣には、和気清麻呂や護王神社、イノシシが描かれていた。もし、この時、道鏡が天皇になっていたら、現在まで続く天皇制はこの時なくなっていたのだから、たしかにその功績は大きい。

●武将たちに信仰された摩利支天

 また、武将たちに大いに信仰された摩利支天に従う動物として描かれることが多いのもイノシシである。

 摩利支天とは「かげろう」の化身とされるが、実体がないため、傷つくことも捕らえられることもないことから、戦いに明け暮れる武士たちに好まれたのだろう。

 摩利支天はすばやく動くとも言われていて、イノシシに乗った姿の仏像も全国各地に存在している。深く帰依していたと言われる武将たちの中には、大河ドラマとなった前田利家や山本勘助など、有名な名前も見て取れる。京都・建仁寺の禅居庵 摩利支天堂や上野・アメ横中にある摩利支天徳大寺は、特に有名である。

●魔除けの猪目はハート型

 加えて、神社やお寺で見かけるハートマーク(猪目という)は、縁結びの印ではなく、はるか昔から寺社の魔除けとして使われている紋である。これはイノシシが山の神と考えられていたことから、イノシシの目の形に似せた形を、境内のあちらこちらに設えたのである。例えば、鈴の隙間や柱や屋根の金具、門扉など「魔」の入りやすい場所を守護する目的で据えられている。大事なところを守ってもらおうと考えるのは、実直なイノシシをおいてないということだろうか。

 2019年最初にお参りするのは、十干の恵方の寺社かあるいは、十二支の亥ゆかりの寺社か悩むところだが、一番のオススメはやっぱり地元の氏神さまかもしれない。

※注)十干十二支(じっかんじゅうにし)は、10の干と12の支の組み合わせで60の数字を表す。十干とは「甲・乙・丙・丁……」と続く10の文字を、十二支とは「子・丑・寅・卯……」という12の文字を表す。これを組み合わせると60通りになり、つまり甲子ではじまり、乙丑、丙寅と続き最後が癸亥となる。

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