そして4度目の栄冠に輝いた11年大会は、ご存知の通り、本田圭佑という看板スターが頭抜けたインパクトを残し、MVPに輝いている。10年南アフリカワールドカップでは1トップという不慣れな役割を強いられながら、カメルーン戦とデンマーク戦の2得点でスターダムにのしあがった男が自らの地位を不動にしたのが同大会である。

 アルベルト・ザッケローニ監督(現UAE代表監督)体制での本田は、エースナンバー10こそ香川真司に譲ったものの、4-2-3-1のトップ下で攻撃陣をけん引した。最初に勝負強さを示したのが、第2戦・シリア戦。初戦・ヨルダン戦は吉田麻也の後半ロスタイム同点弾で1-1に追いつき、黒星を免れた後の重要なゲームで、日本は守護神・川島永嗣が不可解な判定から退場を宣告される事態に陥った。しかし、残り10分を切ったところで岡崎慎司がペナルティエリア内で倒されて得たPKを本田がキッチリ決め、グループリーグ最大の難局を乗り切ったのだ。本田のPKはコースが甘く、相手GKにセーブされそうだったが、それでも強引に押し込んでしまうのがこの男。その勝負強さは誰もが認めるところだ。

 決勝トーナメントに入ってからも、準々決勝・カタール戦での吉田の退場、準決勝・韓国戦での香川のケガなどアクシデントの連続だったが、本田は常に冷静に戦況を見ながら、有効な攻撃チャンスを作り続けた。ゴールこそ1点にとどまり、「日本代表で攻撃を仕切ることは夢でも何でもない。日本代表としての本田圭佑っていうのはまだまだレベルが低い」とあえて苦言を呈し続けたが、「ザックジャパンは本田がいてこそ成り立つチーム」という印象を強く残したのは間違いない。

 カズ、名波、中村、そして本田。アジア王者に輝いた時の日本には必ずエースと言うべき存在がいた。果たして今回の森保ジャパンでは誰がその地位を手にするのか。新2列目トリオを形成する中島翔哉、南野拓実、堂安律のいずれかか。それとも18年ロシアワールドカップ組の大迫勇也、原口元気あたりか。その動向に注目しながら、大会を見てみたい。(文・元川悦子)