■女子の合格者が増えたら寮は…

 ある予備校関係者は医学部「不適切入試」問題の一般論として、「女子差別」につながりかねない意外な視点を明かす。

「医学部には全寮制の大学があります。つまり、男子寮、女子寮それぞれの寮の部屋数が男女の定員ということですよね。実は、ある大学に、『女子の合格者が増えたらどうするのですか』と尋ねたら、『そのときは、新しく女子寮を作ります』と答えてはいましたが、そんな簡単にできるわけもなく……」

 全82医学部のなかで1年次のみ全寮制なのは、順天堂大学、昭和大学、岩手医科大学、川崎医科大学の4大学。このうち岩手医科大学は1つの寮をフロアで男女に分け、フロア間の行き来はできないようにしている。それ以外の3大学は男女別の寮がある。参考までに、今年の入学生の女子比率は岩手医科大学と昭和大学が30%、順天堂大学が32%、川崎医科大学が41%だ。

 ちなみに、ある大学の寮に、「寮の定員は決まっていますか?」と尋ねたところ、「部屋数が決まっていますから、定員はあります」との回答もあった。そもそも女子を増やすことができたのだろうか、疑問も残る。

■男女定員の明記は「性差別だ!」

 東京医科大などの問題を受けて11月上旬に取材中、予備校関係者からは「入学させたい男女の比率が決まっているのなら、入試要項に明記すればいい」との意見も多く出た。しかし、駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長は、その意見に理解を示しつつも、首を傾げる。

「17年に関西のある私立大の工学系学部が、女子が有利になる入試制度を募集要項に明記して入試を実施しましたが、いろいろな批判が多かったためか、1年でその制度をやめました。ですから、医学部も同様に、男子が有利といった入試制度の導入は難しいでしょう」

 第三者委員会からの指摘が“膿”を出すことにつながっているが、受験生や将来医師を目指す中高生のためにも、このタイミングでとことん情報を詳らかにしなければならない。11月中旬には全国医学部長病院長会議が、「医学部入試についての規範」を公表。「性別による一律の点数操作は許されない」「浪人の年数や年齢で評価に差をつけることは不適切(地域枠では実情に応じて可)」などを明示し、違反した場合は処分の対象となる。

 至極当然と思っていた「公平な入試」にようやく立ち返るのは喜ばしいことだが、駿台の石原さんは、将来的な展望として注意を促す。

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