今年1月、ある日の早朝。都心の最低気温は1度と冷え込み、吐く息は白い。
【慶應大、慈恵医大、大阪医科大など、私立大医学部の主な試験会場一覧はこちら】
JRや私鉄など複数の路線が乗り入れる東京都内の駅から、とあるビルまで長い行列ができていた。制服の高校生もいれば、私服やスーツ姿もいる。受験シーズンに大学キャンパスまで伸びる長蛇の列だとすぐに「入試」だとわかるが、ビルやホテルなどへの行列は実際に何が行われるのかわかりにくい。無論、センター試験でもない。
実はこの行列、ある医学部の受験会場につながっていた。
■私立大医学部は人気沸騰。18年連続で志願者増に
医学部は定員が1学年で100人程度と、他の一般的な学部と比べれば少ないほうだ。さまざまな学部を持つ総合大学であればキャンパスは広く、大きな講義室などをいくつも抱えている。だが私立で、特に単科の医科大学は自大学に教室や講義室がそれほど多くない。ゆえに、受験では外部の会場が必要となるケースも発生する。
この試験会場の確保が、医学部入試で悩ましい問題になっている。ある私大医学部の幹部が、頭を抱える。
「ハコがないんですよ」
この「ハコ」とは、まさしく試験会場のこと。自大キャンパス以外の場所、特に地方の医学部が都心近郊の学生を集めるために都内近郊で催す試験会場探しに苦労していると言う。
その理由の一つは、近年の医学部人気にある。
国公立大医学部の一般入試の志願者数は2014年をピークにやや減少しているが、私立大医学部は2000年度からなんと18年連続で増え続け、18年度は10万8699人が志願した。前述のとおり1学年あたり定員は100人前後であるにもかかわらず、受験者数は2千~3千人のところがざらで、なかには8000人を超える大学もある。倍率が10倍以上なのは、もはや当たり前。それほど厳しい医学部入試に、昨今の「女子差別」「多浪生排除」などの問題が一部の医学部で発覚。さまざまな側面から、いま医学部の入試は注目されているのだ。