では実際に、どのような場所を試験会場としているのか。2019年の私大医学部の入試会場の表を見てほしい。
総合大学である慶應義塾大学、帝京大学などは自大学のキャンパスで一次試験を実施するが、多くの私大では会場を借りて実施していることがわかる。なかには、「グランドプリンスホテル新高輪」(杏林大学)、「京王プラザホテル東京」(東京女子医科大学)など、ホテルで実施する大学もある。東京女子医科大学の“ホテル入試”は5年前から始まった。同大総務部広報室によれば「大学から近いこと、志願者数を収容できるキャパがあること」などがホテルを活用する理由と言い、「ホテル側の協力のもとに、適正な入試の実施に専念できる」と話す。地方からの受験生がホテルに宿泊してそのまま試験会場へ……といった利便性もあるが、大学キャンパスで受ける緊張感とは少し異なるものになるかもしれない。
駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長は、試験会場についてこう話す。
「医学部は受験生の数が多いため、会場を押さえるのが大変です。たくさんの教室を使って入試を行うよりも、大きな会場で行う方が運営しやすく、トラブルも起きにくいため、大会場で実施する大学が多い。順天堂大学は『幕張メッセ』の大きな会場1カ所で一次試験を行っています」
幕張メッセといえば人気アーティストのライブが催されるような、いわずとしれた“大バコ”だ。試験当日はコンサートさながら、「座席表」が受験生たちに配られ、席を探していた。彼らにとって幕張メッセが、いわば医師への第一歩となったわけだ。
■会場確保できずに、志願者減
医系専門予備校メディカルラボ本部教務統括の可児良友さんも「会場確保が最優先」だと言い、こう続ける。
「私大医学部の入試日程は毎年変更になります。センター試験の日程が毎年変わることが要因のひとつですが、希望日に会場を確保できず、他大学と同じ日程になって志願者が減った大学もあります。数年前ですが、首都圏の大学の大阪会場の志願者数がキャパシティを超え、東京会場での受験になった受験生もいます」
同予備校名古屋校の生徒が、福岡県の久留米大学医学部と福岡大学医学部のどちらを受けるかというと、名古屋会場が用意されている福岡大学を受ける生徒の方が多いという。それほど、試験会場の確保は影響力があるといえよう。