15年に成立した安保法制が憲法違反だという指摘に対する、安倍首相の根本的な弁解を雑駁に言えば、「だって書いてないもん」ということです。

 たしかに、今の憲法には「専守防衛で個別的自衛権が限界」とは書かれていません。しかし、それでもこれまでの内閣は、なんとか軍事に関する組織や権能をゼロと見積もったと読める9条のもとで何ができるのかという戦後に積み重ねてきた憲法解釈を守ってきた。それを、安倍政権が「今までの解釈で集団的自衛権が認められていないのなら、その解釈を閣議で変更すればいい」としてしまった。こういった状況である以上、私は、憲法で自衛権の発動要件を明文化したほうがいいと考えるようになりました。

■憲法改正で議論になるポジティブリスト

──憲法で自衛隊のできることを明記することは「ポジティブリスト」と呼ばれています。専門家には、憲法にポジティブリストは必要ない、との意見もあります。

 私も憲法で自衛隊の活動範囲をポジティブリストとして規定すべきではないと考えますし、私の提案は憲法をポジティブリスト化するものではありません。そもそも、私の提案は、自衛隊に何ができるかどうかということを書きこむのではなく、自衛権の発動要件を明確化することによって、自衛権を統制しようというアイデアです。とりわけ自衛権の問題は、自国の領土が攻撃される前に、相手国がミサイル発射を準備している時に自衛権が発動できるのかなど、どうしてもグレーゾーンが残る。そのすべてを憲法に書き込むことは非現実的です。

 日本国憲法は改正の手続きが厳しい硬性憲法ですから、その時はよくても、いずれ時代に合わない部分が出てくる可能性があります。そのことを考えずに憲法にルールをたくさん書き込んだら、問題が起きます。

 一方で、上記のとおり、私が主張しているのは戦後の内閣が守ってきた自衛権発動のための旧3要件をベースに、憲法で自衛権の範囲の本質的部分を最低限統制することです。旧3要件とは、自衛権の発動要件であり、すなわち開戦の要件です。これは、軍隊の活動についての「できること」or「できないこと」というポジとネガといった対応関係にはありません。

 また、手続き的な統制として、原則として国会の事前承認を必要とすること、事前承認が難しい場合は事後速やかに国会で手続きをすることや内閣の権限をどのように考えるか、財政による規律はありうるかなども検討が必要です。憲法裁判所による違憲審査の活性化も重要です。

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旧3要件を憲法に入れるべき