20日投開票の自民党総裁選で、安倍晋三首相が3選を果たし、憲法改正が政治日程にあがった。安倍首相は、総裁選後のスピーチでも「憲法改正に取り組みたい」と語り、秋の臨時国会で自民党として憲法改正案を国会に提出する意向を示している。
一方、野党は行政府の長である首相が憲法改正のスケジュールに言及することに反発を強めている。立憲民主党は安倍政権下では自民党と憲法の議論をしないことを表明しているが、山尾志桜里・党憲法調査会事務局長はAERA dot.の取材に、「私とは立場が違うが」と前置きしたうえで、9条2項を削除する石破茂・元自民党幹事長の主張のほうが「自衛権の限界を明確化するという意味で議論できる」と話す。
安倍首相の憲法改正案にはどのような問題があるのか。山尾氏に聞いた。
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──立憲民主党が掲げる「立憲的改憲」とはどのようなものでしょうか。
今、憲法が本来持つべき機能を果たせていないのなら、その機能をきっちりと果たせるように、どうしてその機能不全が起きているかに真正面から向き合い、それが憲法改正によって解決される問題であれば憲法改正を論じ、もちろん法律や規則という憲法附属法レベルで対処が可能であれば、これを検討する。憲法典にこだわることなく、全法体系を横断的に、憲法が持つ価値を真に実践するための議論の作法のことです。
立憲主義とは、憲法によって一人ひとりが善き生を営むための人権を保障すること。しかし、世の中は一人で生きていくことはできません。そのために社会があり、国家がある。個人は「善き生」を営むために国家に権力を負託するわけですが、その権力が時に暴走して、人権の敵になることがある。それを食い止めるために、憲法は国民の側から国家権力を統制する法規範なのです。
しかし、憲法9条がありながらも2015年に安保法制が成立し、それまで政府が否定してきた集団的自衛権が一部認められました。今の日本国憲法は、政権の暴走を止めることができていません。