■レゲエを聴きながら食べる無化調ラーメン
西武池袋線江古田駅から徒歩5分。北口の商店街を抜けた練馬東税務署の前にジャマイカンな外観のラーメン店が見えてくる。「ラハメン ヤマン」である。生粋のレゲエ好きの店主・町田好幸さん(47)が営むお店だ。
町田さんは練馬区の氷川台出身で、生まれてこのかた練馬一筋。高校時代からラーメン本を片手に、食べ歩きをしていた。環七沿いの「ハップンラーメン順基」(現在は閉店)、「土佐っ子ラーメン」など背脂ラーメンが全盛で、町田さんもこってりしたラーメンにハマった。地元の江古田にも「天下一品」がオープンし、よく通っていたという。
そして当時から大好きだったのはレゲエ。HIPHOPを聴き始めたことをきっかけに、ダンスホール・レゲエ、さらに1970~80年代のルーツレゲエに傾倒していった。
この頃から、将来はラーメン屋をやりたいという漠然とした夢があり、アルバイトとして中華料理店でラーメンを作っていた。町田さんは、アルバイト時代から「平ざる」を使っていたというから驚きだ。
麺を茹でるときに使われるザルは、浅くて平らな「平ざる」と狭くて深みがある「テボ」の2つがある。麺ごとに1玉ずつ茹でるテボは湯切りが手軽である一方で、麺がくっつきやすくなる。平ざるは釜の中全体に麺を泳がせながら麺を1玉ずつ分けて上げるという高度な技術げ必要になる。
この時から、自分のラーメン店を持ちたいという夢はあった。だが、まずは大学を卒業し、企業に就職をしようと思っていた。
「ラーメン屋の客は会社勤めの人が多いので、まずはその人たちの気持ちがわからないとダメだなと思ったんです。それで広告代理店をたくさん受けたんですが、すべて落ちてしまったんですよね(笑)」(町田さん)
こうしてアルバイト先の中華料理店にそのまま就職。24歳だった。
次々と料理の技術を身につけていったが、町田さんには一つ引っかかることがあった。化学調味料に抵抗があったのである。町田さんの家庭では化学調味料を使っていなかったこともあって、できれば無化調のラーメンを学んでみたいという気持ちが芽生えてきた。