こうして私は東京女子医大病院腎臓内科にお世話になるようになった。片岡浩史先生は腎臓内科3代目の主治医だ。

 片岡先生との関係については、対談でも触れるので重複を避けるが、医学的見地からだけでなく、私の人生設計を考えて、最適のアドバイスをしてくださった。

■当事者意識を持つ

 それでも作家としての仕事が忙しくなるにつれて会食が増え、体重が増加していった。2010年時点では83キロだった体重が2020年には124キロになってしまった。

 肥満患者の特徴は、過食の事実を否認することだ。この年の11月、片岡先生から急速に腎臓が崩れているので、減量とたんぱく質制限、塩分制限をしないと数ヵ月以内に透析になると警告された。

 同時に片岡先生は、病院の栄養士の石井有理先生を紹介してくださった。

 ここでようやく私も当事者意識を持つようになり、石井先生の指導を受けながら食餌療法と運動療法を併用し、約1年で79キロまで体重を落とすことに成功した。一時、10キロ近くリバウンドしたが、再び減量に取り組んで、この2ヵ月で3キロほど体重を落とすことができた。当面は70キロを目標にして減量に取り組んでいる。

 検査結果からだけで判断するならば、半年から1年前に透析導入になってもおかしくなかった。片岡先生は私の全身状態と意思を総合的に判断し、透析導入のタイミングをできる限り後ろ倒しにしてくれた。その結果、3年分くらいの仕事を1年で処理することができた。

 私はキリスト教徒(プロテスタント)なので生命は神から預かったものと考えている。神がこの世で私が果たす使命が済んだと思うときに、私の命を天に召す。この世界に命がある限り、私にはやるべきことがあると考え、仕事と生活に全力を尽くすようにしている。

 現時点で腎移植まで進むことができるかどうかは、分からない。腎移植が成功すれば、そこで長らえた命を自分のためだけでなく、家族と社会のために最大限に使いたいと思う。

 そこまで進めないのならば、透析という条件下で、できる限りのことをしたいと思っている。

『教養としての「病」』
(1034円<税込み>集英社インターナショナル新書)
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