二つスクリーンがある(撮影/写真映像部・上田泰世)
二つスクリーンがある(撮影/写真映像部・上田泰世)

■シンクロする本と映画

 だが、選書を担当する宮迫憲彦さんは「映画関係以外のほうが取り扱いは多いです」と話す。

 奥の棚には、社会科学、自然科学、小説、京都関係とオールジャンルの新刊が並ぶ。

「奥の棚も『いろいろあるな』と見てもらうと、お客さんにとっての映画の延長線上に、ここの本がシンクロすることがあります。それが本と映画がつながる瞬間だと思うんです」

 一見、関連はなくても、その人の琴線に触れる本が見つかるときがあるのだ。

「出町座という人格があって、『本と映画に関してセンスがいいアイツが言うんだから間違いない』という空間になったら面白いですよね」

 出町座の人格はというと、エッセーや写真集といったサブカル系は少ない。

「新書と専門書の間のようなアカデミック寄りな、文字が多めの本が好まれます。大学のにおいがします」

 本をめくっていた京都市内の40代女性は言う。

「ここにくると、アートに触れたような気になります。今日はいいことしてるなって」

 店から3分ほど歩くと、鴨川デルタと呼ばれる鴨川の三角州にたどり着く。これから新緑の季節だ。カフェ店長の金沢莉子さんは言う。

「サンドイッチやコーヒーをテイクアウトして、ピクニックするのもおすすめです」

(編集部・井上有紀子)

AERA 2023年5月1-8日合併号より抜粋