東大は2期制で、前期と後期はそれぞれ二つに分けられている。生命科学実験は前期の前半の授業だが、前期の成績が出たところで8月19日に進学の可否が決まる。真実を知りたい杉浦さんは同4日、文部科学省の記者クラブで記者会見した。

 報道各社の問い合わせに教養学部は杉浦さんの減点を認め、「杉浦さんとほかの学生の評価を誤ってつけていたことがわかった」などと初めて明かした。

 その後、杉浦さんに届いた大学からの文書には「杉浦さんの評点に実際の成績より17点高い他の学生の評点が入力されていて、その学生の評点には実際の成績より17点低い杉浦さんの評点が入力されていた」と書いてある。

 授業は6回。1回の平均は約17点なので、1回の授業の満点にあたる点数をとった学生と取り違えられたことになる。この教科は50点で「可」が与えられる。17点が加点された状態でも不可ということは、杉浦さんが32点以下だったことを意味する。

■仮処分の申請も

 説明文書の最後は「5月17日の回について代替措置の機会を得たとしても、単位取得が不可能な評点となっていることを申し添えます」と書かれていた。

 杉浦さんは4月の授業で出席の手続きを忘れ、一度はあきらめて課題を出すのが遅くなったことはあるが、コロナによる補講を含めて5回の課題に真剣に取り組んだと思っている。

 ところが、不可と知って教員に働きかけるなどした後、1回の授業の満点に相当する減点があり、補講が1回分認められても合格点に届かない点数に下げられた事実が明らかになった。

 大学は19日、留年と発表したが、杉浦さんは「大学側は減点についても記者会見をして初めて理由を説明した。不透明な点が多いので、留年が決まったら裁判の場で明らかにしたい」と話し、近く進学のための仮処分を東京地裁に申請することにしている。(朝日新聞記者・松浦新)

AERA 2022年8月29日号