大幅減点について問い合わせた杉浦さんに対する東大教養学部からのメール回答。「適正な修正」とだけ書かれ、理由の説明はない(photo/松浦新)
大幅減点について問い合わせた杉浦さんに対する東大教養学部からのメール回答。「適正な修正」とだけ書かれ、理由の説明はない(photo/松浦新)

 東京大学教養学部が、学生が提出した課題の評価を取り違えたと公表して揺れている。東大は2年の前期までの成績で3年からの進路が決まるためだ。AERA 2022年8月29日号より紹介する。

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 発端は5月、理科III類の2年生、杉浦蒼大さんが新型コロナによる高熱と呼吸困難などで、必修科目の「基礎生命科学実験」の授業を受けられなかったことだった。カエルの解剖などの実験を見て、課題を毎回提出する。杉浦さんはオンラインでの受講を選んだが、5月17日朝に発症し、同日午後の授業が受けられず、1週間後の24日も受けられる体調ではなかったという。

 25日に担当教官に連絡ができる状態に回復し、事情を説明したという。しかし、1回目の欠席の補講は「経過日数的に対応できません」と認められず、2回目の分だけを受講。ビデオを見て課題を提出するものだった。

 補講後も後遺症で苦しんだ杉浦さんは、6月17日の成績発表で同実験の「不可」を知る。東大は、2年の前期までの成績で3年で進む学部が決まり、2年の後期は進学先の授業を受ける。1単位でも必修を落とせば後期の授業は受けられない。

■明確な説明なく

 杉浦さんは、その日に、最初に診断を受けた診療所と後遺症の治療を受けていた診療所からそれぞれ診断書をもらい、教官に提出しようとした。しかし、教官からは「もはや特段の意味はありませんので提出不要とします」とするメールが届いた。

 杉浦さんは納得せず、教養学部にも事情の説明を求めた。6月末に森山工・学部長らによる説明の文書が届いた。「杉浦さんの提出課題の評価には低い評点しか与えられなかった」とあり、欠席とされた5月17日の授業について「出席であり、かつ提出課題に満点の評点が与えられていたとしても」、ほかの授業を含めた全体として「不可の評価であることが確認されています」と書かれていた。

 この間に杉浦さんは、不可とされた教科で、成績発表後に大きく点数を下げられたことに気づいた。教官と教務課に確かめるが、教官は回答せず、教務課も「適正な修正」と答えるだけで明確な説明がない。

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