米国に向け出発する小室圭さん、眞子さん。今も世の中の関心は高い=2021年11月14日、羽田空港(撮影/写真映像部・松永卓也)
米国に向け出発する小室圭さん、眞子さん。今も世の中の関心は高い=2021年11月14日、羽田空港(撮影/写真映像部・松永卓也)

 それにしても、なぜ小室夫妻への「税金」がこれほど問題とされるのだろう、と考える。

 例えばアベノマスクだが、余った約8千万枚の保管に年間6億円かかっていた。すべて廃棄するのはもったいないと、4月1日から希望者への配布が始まった。費用は約3億5千万円。すべて税金なのに、批判は高まらない。安倍晋三さんは1月、自分の派閥の会合で「(希望者への配布を)もっと早くやってもらったらよかった」などと、のん気に語っている。

「権威」なのだと思う。岸信介の孫で、元首相。そういう大きなストーリーがなくても、国会議員=権威。世の中がそう受け止めている。だから昨秋に盛り上がった1日在職しただけで100万円もらえる文書通信交通滞在費への批判も、長続きしなかった。与野党が「日割り」に合意したのは4月12日。「権威」だから、半年もかけられる。

権威、肩書が基準に

「コロナの女王」の異名をとった岡田晴恵さんへのバッシングも同じだと思う。国立感染症研究所から白鴎大学教授に転じた専門家だが、ネット上の書き込みは露骨にこう言っていた。「医者でもないくせに」。確かに尾身茂さんら、表舞台に立つ専門家は医者だ。国会議員、医者。わかりやすい肩書があれば別格、なければ叩いてよし。そういう世の中の真ん中に、小室夫妻は立っている。

 圭さんは、これまでの女性皇族結婚相手と大きく違う。学習院に接点がなく、弁護士事務所のパラリーガルとして登場した。そこに加わった母の金銭問題が「叩いてよし」の号砲になり、眞子さんへの1億円を超える「一時金」がガソリンとなった。彼には「権威」がなく、秋篠宮家は「次男家」。ブレーキが利きにくい組み合わせだった。

 眞子さんと小室さんは、しみじみと時代の合わせ鏡だと思う。小室さんを、上昇しようとしてし損ねた人、または上昇しようとする資格のない人と見たいのだろう。だが、そう思う人々も格差社会の確かな一員で、その生きづらさは例外ではない。

 なんだか暗くなったから、最後に4月第2週に終わったNHK朝ドラ「カムカムエヴリバディ」の話を。最終週、白髪のるいと錠一郎が登場した。晩年の2人は実に穏やかで、とても美しかった。人生は最後までわからない。眞子さんと圭さんの人生は、まだまだこれからだ。(コラムニスト・矢部万紀子

AERA 2022年5月2-9日合併号より抜粋

著者プロフィールを見る
矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

矢部万紀子の記事一覧はこちら