クロスフィールズがコロナ禍に立ち上げた「共感VR」のワークショップ。教育現場での活用も広がる(photo 提供)
クロスフィールズがコロナ禍に立ち上げた「共感VR」のワークショップ。教育現場での活用も広がる(photo 提供)
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 コロナ禍はとりわけ、中小・零細企業や商店を苦境に陥れた。そんな逆境をバネにチャンスに変えた人もいる。多くの分断を生んだコロナ禍の出口は、ポジティブにつながる社会の入り口であってほしいと願う人たちだ。AERA 2022年3月7日号から。

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 国際協力と企業のリーダー育成を手がけるNPO法人クロスフィールズ(東京都品川区)。小沼大地代表理事(39)は「この2年間でより打たれ強くなった気がします」と話す。

 コロナ禍の前の主力事業は、企業の若手社員を新興国のNGOなどに派遣する「留職」と、企業の幹部社員が国内外の社会課題の現場を体感する「フィールドスタディ」の二本柱。この事業モデルは、新型コロナウイルスの感染拡大とともに壊滅的なダメージを受けた。

 2020年2月には留職が中止に追い込まれ、人との密な接触が前提のフィールドスタディも継続が困難になった。両事業で見込んでいた約2億円の収入がすべて失われたうえ、返金も必要になった。

「経験したことのない絶望の谷に突き落とされたのが、私たちにとってのコロナ危機でした」(小沼さん)

「撤退戦」の日々。プレッシャーと先行きへの不安が相まって、小沼さんは精神的に追い込まれていく。

■日記に「悪夢と動悸」

 3月後半には胃薬がないと夜眠れなくなった。不調を自覚した小沼さんは、自分の心情と向き合うため日記を書き始めた。3月23日の日記には「娘の卒園式の後に昼寝をしたら悪夢を見て、その後は動悸(どうき)が治まらず、精神的にまずい状況にいると思う」と書かれている。見かねた妻から、経営者向けのコーチに相談するよう勧められた。

 コーチに「何が不安で何が恐怖なのか」と問われたが、冷静に考えると判然としなかった。11年の創業以来、赤字に陥ったことはなく、相当の内部留保もあった。同時に、職員に対する感謝の念が湧き上がった。

「去っていった職員も含め、これまでのスタッフの努力や、ステークホルダーの皆さんとの信頼関係があったからこそ、積み上げてこられたものだと気づいたんです」(同)

 小沼さんは危機の中でこそ、自分とチームを大切にする教訓を得たという。これが転換点になり、メンタルを整えて現実と向き合うことができた。

 4月以降、コロナ禍でも実施可能な事業を模索。新たに始めた「国内留職」「オンライン型フィールドスタディ」「共感VR」の3事業は今、予想もしなかった広がりを見せている。

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