クロスフィールズ
国内で社会課題解決に向けて活動するNPOや社会的企業に社員を派遣する国内留職。多国籍なメンバーと課題解決に挑む(photo 提供)
クロスフィールズ 国内で社会課題解決に向けて活動するNPOや社会的企業に社員を派遣する国内留職。多国籍なメンバーと課題解決に挑む(photo 提供)

 グローバルな社会課題に取り組む国内の団体に派遣するプログラムへ切り替えた「国内留職」は、コロナ禍でもグローバル人材を育てたい企業のニーズをつかんだ。海外派遣を再開できるようになれば、「留職プログラム」の中に国内版と新興国版を並立させるつもりだ。

 社会課題を体感する「フィールドスタディ」は「オンライン対話型」にシフトした結果、テーマも参加者もグローバルに拡大した。社会課題の現場を疑似体験する「共感VR」は国の事業に採択され、自前のコンテンツが全国の中学・高校に提供されている。ビジネスパーソン向けに立ち上げた事業が、子どもの教材になるのは予想もしなかった展開だ。

「危機に陥るとどうしても視野が狭くなり、内にこもって自分の力で何とかしようと考えがちですが、窮地のときに手を差し伸べてくれる周囲の人たちに感謝し、思い切り頼ってみる。そうした中で突破口が見えてくるのだと思い知りました」(同)

 20年度の事業規模は前年度を上回る約2億3千万円。長期戦略を練り直し、職員もコロナ前の20人に加え、5人以上を増員予定だ。小沼さんは言う。

「人と人がつながるソーシャルキャピタルはお金よりも価値があると思っています。社会の分断に『共感』の力で立ち向かい、社会課題の解決を加速していきたい」

■オンラインでも実体験

 パソコン画面に映し出されたバスの車内で、ワクワク感と親しみやすさを醸しながら道中を案内するのは、琴平バス(香川県琴平町)執行役員の山本紗希さん(32)。オンラインバスツアーの仕掛け人だ。

山本紗希さんが「プランナー・さきちゃん」と称し、没入感にこだわったツアーを盛り上げる(photo 提供)
山本紗希さんが「プランナー・さきちゃん」と称し、没入感にこだわったツアーを盛り上げる(photo 提供)

 新型コロナの感染拡大でバスツアーの全面中止を余儀なくされた20年4月。社内会議で山本さんはこう提案した。

「お客様にリアルで会えないのなら、とりあえずオンラインでやってみるしかありません」

 とはいえ、前例はない。反対意見も出たが、社長が背中を押してくれた。

 提案から3日後。同業他社の経営者らを招き、トライアルツアーを開催。定番の観光地の画像を並べただけの案内は不評だったが、いろんなアドバイスをもらった。

「事前にお土産を送ったほうがいい」「食べ物も食べたい」「ライブ中継もしてほしい」

 これらをすべて取り入れたのが、業界初のオンラインバスツアーの原型になった。

 参加を申し込むと、特産品が宅配便で届く。旅先の動画の景色を眺めながら飲食する趣向だ。現地ガイドや他の参加者とも会話でき、ライブ感満載で旅気分を味わえる。

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