「免疫力はもともと体内に備わっているもので、外部から『免疫力アップ』という薬を飲めば強くなるというものではありません。漢方医学は、その人の体質や体調に応じて、弱いところを補ったり、過剰な部分を捨てたり、流れを良くしたり、バランスを整えたりすることで、本来、人間の体に備わっている免疫力の向上を目指します」

 補う、捨てる、流れを良くする、バランスを整える──これらのアプローチで“生きる力”を高めてウイルスを寄せ付けないようにする。単純に「免疫力を上げる」といっても、個人個人の不調の原因ごとに、飲むべき漢方薬は違ってくるのである。

 ここで先ほど幸井さんが示してくれた4パターンが生きてくる。それぞれの症状を改善するために使われる漢方薬を末尾に記載したので、参考に。

 新前橋すこやか内科・漢方内科クリニック(群馬県)の本城裕章医師にも話を聞いた。一般的な内科、外科以外に自由診療も行う。冷え性や仕事上のストレスを抱えて来院する女性患者も多い。本城さんは自らも漢方愛好家だそう。

「私自身、普段は体力向上に役立つといわれる補中益気湯のエキスを服用しています。病院で患者さんの治療を行うときは、体表面のバリア機能を高める作用がある桂枝湯(けいしとう)を服用。風邪っぽいなと感じたら、自分には葛根湯が合うようですので、市販の葛根湯(かっこんとう)の錠剤をぼりぼりとかじっています。真面目な先生には叱られると思いますが……」

 あくまで“個人の使い方”だが、真似したくなる。

【免疫力低下の原因別漢方薬】
・冷え性
八味地黄丸(はちみじおうがん)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
・乾燥体質
麦門冬湯(ばくもんどうとう)、麦味地黄丸(ばくみじおうがん)
・虚弱体質
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、人参養栄湯(にんじんようえいとう)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
・ストレス過多
四逆散(しぎゃくさん)、逍遙散(しょうようさん)
・オールマイティー
桂枝湯(けいようとう)、葛根湯(かっこんとう)、玉屏風散(ぎょくへいふうさん)

(ジャーナリスト 安住拓哉 編集部・中島晶子)

AERA 2021年1月18日号より抜粋

著者プロフィールを見る
中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

中島晶子の記事一覧はこちら
著者プロフィールを見る
安住拓哉

安住拓哉

出版社勤務を経て2021年に独立。経済関連記事全般が得意。取材・執筆歴20年以上。雑誌の取材記事の他、単行本のライティングも数多く手掛ける。

安住拓哉の記事一覧はこちら