■自己防衛としての漢方

「西洋医学は熱が出たら解熱する、痛みがあったら鎮痛剤を処方する、というように症状の緩和やコントロールを重視する『対症療法』です。一方、漢方は熱が出やすい体質やアレルギー体質など“原因となる悪い部分”を改善し、落ち込んだ体の状態を元に戻すことを目指す『原因療法』。その点に大きな違いがあります。新型コロナの場合、治療薬やワクチンが普及していません。ウイルス自体を駆逐する特効薬が完全には確立されていない以上、コロナにかかりにくい体になるべく、漢方に救いを求めるのは理にかなっているのかもしれません」

 ウイルスに負けない、強い体づくりこそが最善の自己防衛策になる。そのために漢方薬は選択肢の一つとなるわけだ。

 ここで、免疫力が低下しやすい体質について、幸井さんがパターン化してくれた。

・冷え性(腎陽虚(じんようきょ))
・乾燥体質(肺陰虚(はいいんきょ))
・虚弱体質(脾気虚(ひききょ))
・ストレス過多(肝鬱気滞(かんうつきたい))

■免疫力低下には4種類

「人体が持つ生命力やウイルスに対する抵抗力を漢方では『正気』と呼びますが、五臓六腑のバランスを整えることで、この正気を強め、免疫力を上げようとします。五臓というと西洋医学でいうところの『内臓』のようですが、体の機能を漢方独自の概念で分けたものです」

 腎陽は生きるために必要なエネルギーや栄養を蓄え、陽の気を養う機能とされる。衰えると冷えが生じる。

 肺陰は喉や肺など空気に触れる粘膜を潤す機能。粘膜が乾燥すると病原体に感染しやすくなるという意味で、コロナ対策と相性が良さそうだ。

 脾気は消化吸収や代謝をつかさどり、エネルギーや栄養の源を生成する機能。ここが弱くなると、疲れやすくなって免疫力が低下していく。

 肝気は体の諸機能のバランスを保ち、情緒を安定させる働きをする。ストレスがたまるとその機能が鬱結してしまう。

 では、免疫力アップが期待できる漢方薬はどれか?

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